自己破産について
「自己破産」がどのようなものであり、どんな制約があって、どういった場合に選択すべきなのか、または、してはいけないのかについて、意外と知らない経営者もいるのではないでしょうか。あくまでも万が一の話ではありますが、知識として持っておくに越したことはありません。
概略をお話ししておきます。どうにもならない状況に陥った場合、自己破産をしたほうがいいケースがあります。ただし、ギャンブルなどにはまってしまったがためにお金を借りて、立ち行かなくなって自己破産を繰り返すようなケースは別問題なので、割愛します。
問題は、事業の失敗で多額の借金を抱えてしまったようなケースですね。たとえば、個人の負債として1000万円や2000万円を抱えてしまった場合、その借金をコツコツと自分の給料で返すとなったら、どうでしょうか? 決して返せないものではないのでしょうし、人道的にも返済していくのが筋なのかもしれません。
ところが、たとえば月50万円の給料をもらえるようになり、そのうち20万円を毎月の返済に充てたとすると、それはとてつもなく大変なことです。一生かけて返すような話になってくるのではないでしょうか。
なおかつ、その状態では永遠にクレジットカードも持つことができません。クレジットカードを持てない制約のなかで、借金だけを返し続ける生活が、一生続くと思ったほうがいいような状況です。それは、かなり厳しいのではないでしょうか。
もちろん、商才があって「ポン!」と1000万円や2000万円の売上を上げて、マージンで500万円くらいをとれるような仕事をしているのであれば、話は別です。でも、そういったケースは極めて少ないでしょう。
さらに、借金が億単位の場合には、たしかに交渉をして返済計画を決めて、がんばって返すような方法もあるでしょう。でも、先立つものがなければ基本的には無理ではないでしょうか。
こういった場合は、自己破産を選択するのもひとつの手段なのです。
自己破産をすると、カードが持てず、借入もできない
そうは言っても、自己破産をしたときの制約も知っておく必要があります。まずは、自己破産をすると当然ながら、金融機関からお金を借りることができませんし、カードもつくれません。その期間は、金融機関で10年、クレジットカードは5〜7年程度です。ただし、この期間は表向きの話であり、じつは一生残ってしまうものなのです。
自己破産すると、その情報が「公示」されます。つまり、名前が公にされ、行政機関や裁判所に貼り出され、官報にも名前が載ります。自己破産をしたあとはどうでしょうか。まず、普通に生活はできます。会社員なら、普通に仕事も続けられます。
クレジットカードが使えない、つくれない、といった制限があるだけです。信販会社の分割購入もできなくなりますし、保証人になる権利も失います。親御さんがわが子の奨学金の保証人になろうとしても、少なくとも一定の期間はなることができません。ローンも、一定の期間は組むことができません。