●利上げ幅は予想通り25bp、声明で物価の表現を若干修正も利上げ継続が適切との文言維持。
●パウエル議長はサービス価格の高止まりを指摘、あと2回程度の利上げに言及も、未確定を示唆。
●利上げ停止の明示はなかったが、市場は時期が近いとの見方、関心は徐々に利下げ開始時期へ。
利上げ幅は予想通り25bp、声明で物価の表現を若干修正も利上げ継続が適切との文言維持
米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月31日、2月1日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、4.25%~4.50%から4.50%~4.75%へ引き上げることを決定しました。利上げ幅は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、前回12月FOMCでの50bpから縮小しましたが、市場には織り込み済みでした。今回は利上げ停止の手掛かりが焦点でしたので、以下、詳しくみていきます。
まず、FOMC声明では、物価に関する表現が若干修正されました。今回、「物価上昇率はやや鈍化した」との文言が加わり、従来の「この戦争(ロシアによるウクライナ侵攻)と関連する出来事は物価上昇圧力に寄与している」との文言が削除されました。一方、利上げ継続が適切との文言や、利上げの度合い(従来の「ペース」を修正)は金融引き締めの累積効果や時間差などを考慮して決めるとの文言は維持され、バランスのとれた内容となりました。
パウエル議長はサービス価格の高止まりを指摘、あと2回程度の利上げに言及も、未確定を示唆
次に、パウエル議長の記者会見における発言を確認していきます。パウエル議長は、労働市場について、非常に強い状況にあるとし、雇用動態調査(JOLTS、米労働省が毎月発表する企業の求人件数などの調査)の数字が、恐らく重要な指標であるとの見解を明らかにしました。また、物価について、財の価格上昇率は低下傾向がみえてきたが、住宅以外のサービス価格はまだその傾向がみえていないと述べました。
また、今後の利上げについては、あと2回程度の利上げで、景気抑制的と考えられる適切な水準に達するとの見方を示した一方、3月のFOMCまでに、あと2回の雇用統計と消費者物価指数(CPI)の発表があり、その結果を政策に反映していくと述べました。そして3月の会合では、FF金利の見通しを改定するとし、3月までの経済データを踏まえ、年末時点のFF金利の水準は、上方にも下方にも修正される可能性があると発言しました。
利上げ停止の明示はなかったが、市場は時期が近いとの見方、関心は徐々に利下げ開始時期へ
今回のFOMCでは、物価に関する伸びが鈍化したとの評価は、現状追認程度にとどまり、利上げ停止の手掛かりも、明確なものは示されませんでした。ただ、市場では、懸念されたほどタカ派的な内容ではなかったと、受け止められたように思われます。実際、2月1日の米国市場では、今回のFOMCの結果を受け、長期金利低下、ドル安、株高の反応がみられました(図表1)。
弊社では米国の金融政策について、3月21日、22日のFOMCで25bpの利上げが行われ、FF金利の誘導目標は4.75%~5.00%で年内据え置きとの見方を維持しています。FF金利先物市場も、利上げは3月で終了との織り込みですが、年内の利下げが予想されています(図表2)。物価や雇用次第で、3月以降も利上げが続く可能性は残りますが、市場の関心は徐々に「利上げの終了時期」から「利下げの開始時期」に移りつつあるように思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2023年1月FOMCレビュー ~おおむね想定内で市場は安堵【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト