(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●総裁候補の本命は、雨宮副総裁と中曽前副総裁だが、両名とも総裁就任に消極的との報道も。

●山口元副総裁が総裁候補に浮上、ADB総裁浅川氏やコロンビア大教授伊藤氏も総裁候補に。

●どのような人選でも思惑的な市場の反応は一時的となり次第に政策を確認する流れに落ち着こう。

総裁候補の本命は、雨宮副総裁と中曽前副総裁だが、両名とも総裁就任に消極的との報道も

日銀の雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁は3月19日、黒田東彦総裁は4月8日に、それぞれ任期満了を迎えます。後任の人事案は今月、国会に提出される見通しとなっており(図表1)、将来の金融緩和修正に向けた布陣となるか、注目が集まっています。そこで、以下、次期総裁・副総裁として有力視されている候補者の主な顔ぶれを確認し(図表2)、任命された場合に予想される市場の反応について考えます。

 

(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]日銀正副総裁人事の決定の流れ (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)敬称略。 (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]次期日銀正副総裁候補の主な顔ぶれ (注)敬称略。
(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

総裁候補の本命は、黒田体制で異次元緩和を支えた雨宮副総裁と中曽宏前副総裁です。雨宮氏は、金融政策の企画・立案を行う企画畑が長く、異次元緩和などの金融政策の設計にかかわってきました。中曽氏は、金融システムや市場の危機管理の経験が長く、国際決済銀行(BIS)市場委員会で議長を務めたこともあり、国際派として知られています。ただ、最近では、両名とも総裁就任には消極的との報道もみられます。

山口元副総裁が総裁候補に浮上、ADB総裁浅川氏やコロンビア大教授伊藤氏も総裁候補に

こうしたなか、総裁候補として名前が浮上しているのが、山口広秀元副総裁です。山口氏は、雨宮氏、中曽氏と同じく日銀生え抜きで、白川方明前総裁時代の2008年から2013年に副総裁を務め、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災などの危機に対応しました。高松支店長や企画局長、理事を経験し、日銀内の管理にも精通していると称されています。

 

また、元財務官の浅川雅嗣アジア開発銀行(ADB)総裁、伊藤隆敏コロンビア大学教授の名前も、総裁候補に名前が挙がっています。浅川氏は、4年にわたり財務官を務め、国内外の経済・金融情勢に詳しく、自民党の麻生太郎副総裁の信頼も厚いとされています。伊藤氏は、財務省や国際通貨基金(IMF)で実務経験を持ち、海外での知名度も高く、インフレ目標を推進する第一人者です。

どのような人選でも思惑的な市場の反応は一時的となり次第に政策を確認する流れに落ち着こう

副総裁候補には、日銀出身の翁百合日本総合研究所理事長の名前が挙がっています。翁氏は、令和国民会議(令和臨調)の財政・社会保障部会で、平野信行三菱UFJ銀行特別顧問と共同座長を務めており、先月30日に、政府・日銀の共同声明に関する提言を発表しました。また、浅川氏を副総裁候補とみる向きもあり、内田真一日銀理事、清水季子日銀理事も副総裁候補に名を連ねています。

 

現時点で、岸田文雄首相は日銀生え抜きを総裁に起用し、副総裁で独自色を出すとの見方が多いように思われます。市場で緩和修正観測が強まり、長期金利上昇、円高、株安の反応が予想される人選は、山口氏、翁氏などが考えられます。ただし、誰が次期総裁・副総裁に就任しても、先行きの政策展開を見極めるには時間を要するため、人事案が明らかになった際の市場の反応は一時的にとどまり、政策の方向性を確認する流れに落ち着くとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「日銀の総裁・副総裁人事」と予想される市場の反応【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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