「私と弟で、母の遺産の分け方を決めるのですが…」
生徒:先生、亡くなった母の遺産の分け方について、これから私と弟の2人で話し合うのですが、「遺産分割協議書」というものを作成しなくてはいけないのでしょうか?
先生:そうですね。遺言がなかったということなら、だれが、どの遺産を、どれだけ受け取るのか決められていませんから、現時点では、遺産が相続人全員の共有になっている状態です。そのため、遺産分割協議をおこなって、その結果を書面にまとめなければいけません。その書面のことを遺産分割協議書というんですよ。
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生徒:文書にしておかなければいけないんですか?
先生:そうです。遺産分割協議書がなければ、銀行預金の解約や名義変更、不動産の相続登記ができませんよ。
生徒:期限はありますか?
先生:相続税の申告があれば、申告期限が10カ月以内ですから、それまでに遺産分割協議書を作成しなければいけませんね。
生徒:相続税を申告して、遺産を受け取るための必要書類ということですね。もし話し合いで合意できない場合は、どうすればいいのでしょう?
先生:話し合いにまったく応じない人がいたり、話し合いに合意できなかったりする場合は、裁判所で解決してもらうことになります。家庭裁判所の調停や審判ですね。弁護士費用も時間もかかるので、できれば避けたいですがね…。
生徒:では、合意できた場合、遺産分割協議書はどうやって作ればいいのでしょう?
先生:遺産分割協議書を作るときは、事前に亡くなったお母様の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて集め、相続人が全員参加しているか確かめなければいけません。なかには、養子や、認知している子がいたりする場合があるからです。これまで家族が知らなかった子どもが見つかるケースも、たまにあるんですよ。
生徒:なるほど。もしそんなことがあったら、子どもとしては複雑ですね…。
先生:また、遺産分割協議をおこなう前に、亡くなったお母様の遺産をすべて漏れなく見つけ出す必要があります。遺産には、銀行預金や不動産などのプラスの財産のほかに、借金や債務保証などマイナスの財産もあるから注意が必要ですよ。財産目録のようなリストを作っておきましょう。
生徒:借金も相続されるんですよね。ですが、漏れなく見つけ出すといっても、どうすればいいんでしょう…。
先生:まずは、亡くなったお母様の部屋に保管されている書類を調べてみることです。固定資産税納税通知書は、すぐに見つけられるでしょう。預金通帳やキャッシュカード、証券会社から送付される取引報告書、生命保険の保険証書などが出てくると思います。タンスなどの奥から、実家の不動産の権利証や、古い有価証券などが見つかることもありますよ。親戚から話を聞いてみるといいですね。念のため、パソコンやスマートフォンなども調べましょう。何か情報が保存されているかもしれません。銀行の貸金庫などがあれば、必ず開いて調べなければいけませんよ。
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遺産分割協議書は、どのように作成すればいい?
生徒:相続人が確定し、すべての財産確定し、相続人全員の遺産分割協議がまとまったら…、次はどうすればいいですか?
先生:話し合いがまとまったら、その合意内容を記載した遺産分割協議書を作成します。
生徒:決まった書式はありますか? 省庁のウェブサイトから遺産分割協議書のサンプルを見つけましたが…。
先生:遺産分割協議書の書式はとくに決まっているわけではありませんが、サンプルのような感じで作成すれば大丈夫ですよ。
生徒:不動産は、どのように書けばよいのでしょうか? 「自宅」とだけ書けばいいですか?
先生:建物や土地は、全部事項証明書、つまり戸籍謄本の記載に合わせて書く必要があります。土地の場合は、所在は東京都のどこ、地番は何番、地目は宅地、地積が何平米…といった感じですね。持分があれば、その割合も書きます。マンションなら、必ず持分を書きますよ。
生徒:建物については、どの程度まで書いておけばいいのでしょうか?
先生:建物だと、所在がどこ、家屋番号が何番、種類が居宅、構造がどうなって何階建てか、床面積が何平米か、といったことを書きます。
生徒:わかりました! 遺産分割協議書の最後には、日付を書きますよね。これは相続発生日ですか?
先生:いいえ。すべての相続人が署名押印した日を書きます。同じ日に全員の署名押印ができなくて、持ち回りで署名と押印した場合には、最後に回ってきた相続人が署名押印した日を記入することが一般的ですね。
生徒:署名と押印ということですから、名前は自分で手書きするんですよね?
先生:名前は、パソコンで印字してもいいのですが、重要な書類ですから、手書きで署名したほうがいいでしょう。
生徒:ハンコは三文判でも大丈夫ですか?
先生:いいえ。遺産分割協議書では、必ず実印を押します。三文判ではダメですよ!
生徒:では、最後の署名のところに実印を押せばいいんですね?
先生:製本するとき、署名のところだけでなく、すべてのページを見開きにして、そのつなぎ目を左右両ページにまたがるように、契印を押すことが必要です。ただし、製本テープを貼ったときは、表表紙と裏表紙で、紙面と製本テープにまたがるように契印を押してもかまいません。ちなみに、銀行や税務署に提出するときは、印鑑証明書を添付することになります。
生徒:わかりました。1通作って、それをコピーすればいいですか?
先生:いいえ。遺産分割協議書は、相続人が原本を1通ずつ保管することになるから、人数分だけ作ることになりますよ。
生徒:複数作成するのであれば、割り印が必要でしょうか?
先生:できれば割り印を押しておいた方がいいですね。ただし、押していなくても無効になることはありません。
生徒:遺産分割協議書を作ったあとに、記載内容の間違いが判明したら、どうすればいいのでしょう? 作り直しですか?
先生:そのような場合を想定して、捨印を押しておくんですよ。間違いがあれば、加筆や訂正をすれば大丈夫です。
生徒:遺産分割協議書を作った後から、新たな遺産が出てきた場合はどうするんですか? 捨印のところで訂正するのですか?
先生:通常は、後日遺産が発見される場合を想定して、「記載のない遺産」と「後日存在が判明した遺産」について、誰が引き継ぐかを決めておき、それも記載しておくんですよ。
生徒:そうなんですね! ありがとうございました。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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