社内で「パワハラ疑惑」発生…とるべき「5つの対応」
パワハラかどうかグレーゾーンである事例が社内で発生した場合には、次のように対応しまよう。
1.グレーゾーンの言動をした社員に注意喚起を行う
パワハラかどうか判断に迷うようなグレーゾーン事例が社内で発生した場合に、明確にパワハラであると判断できないからといって、対応しないでいることはおすすめできません。
なぜなら、たとえいまはグレーゾーンに留まっていても、放置してしまえばより悪質なパワハラへと発展する可能性があるためです。
この場合には、パワハラが疑われる言動をした社員に対して、事情を聴取したうえで、これ以上行き過ぎた言動をすればパワハラとなり得ることを伝え、注意喚起をしておきましょう。
2.社内で発生した「グレーゾーン事例」を集めて周知する
先ほども解説したように、パワハラかどうかの線引きは明確にできるものではありません。最終的には、個別事情に応じて裁判所が判断することとなります。
そのため、社内でパワハラに該当しそうなグレーゾーン事例が生じたらその事例をまとめ、「ヒヤリハット事例」などとして共有するとよいでしょう。
パワハラは、パワハラであるとの意識がないままに行ってしまうケースも少なくありません。そのため、事例を周知することで、パワハラへの理解が深まる効果が期待できます。また、事例を共有することにより、会社がパワハラ防止に努めていることが伝わるため、パワハラの抑止力ともなるでしょう。
ただし、事例を共有する際には、被害者のプライバシーに十分配慮することが必要です。
3.パワハラ事例に詳しい弁護士を招いて「パワハラ研修」を行う
パワハラのグレーゾーン事例が社内で発生してしまった場合には、パワハラの芽が社内で生まれてしまったということです。そのため、パワハラ研修を実施するなどして、改めてパワハラ予防策を講じましょう。
パワハラ研修の講師は、外部の弁護士などパワハラの最新事例や対処法にくわしい専門家を招いて行うことをおすすめします。
4.パワハラをした際の「懲戒処分規定」を周知する
パワハラ研修と併せて、仮にパワハラをした場合の懲戒処分規定を社内に周知しましょう。懲戒処分規定を周知することでパワハラを見逃さないという会社の姿勢を示すこととなり、パワハラの抑止効果が期待できます。
仮にパワハラ加害者の懲戒処分について定めていない場合には、この機会にしっかりと定めておいてください。
ただし、行為に対して処分が重過ぎると、いざ規定を適用して処分を下した際に、加害者側から処分の無効や損害賠償請求がなされる可能性があります。そのため、懲戒処分規定は、労働問題にくわしい弁護士のサポートを受けて作成するとよいでしょう。
5.相談者に対して不利な取り扱いをしない
たとえグレーゾーンである内容や、結果的にパワハラには該当しない内容であったとしても、相談をした人に対して不利な取り扱いをしないよう注意しましょう。
これは、労働施策総合推進法第30条の2第2項でも要請されています。
◆まとめ
その言動がパワハラに該当するかどうかは個別事情によるところも大きいため、一律に判断できるものではありません。
結果的にパワハラではないと判断された場合であっても、別の状況下では、同じような言動がパワハラに該当する可能性は十分にあり得ます。
そのため、パワハラの定義をしっかりと確認したうえで、明らかにパワハラである行為はもちろんのこと、パワハラに該当するかどうかギリギリのラインの言動をすることも避けるべきといえるでしょう。
西尾 公伸
Authense法律事務所
弁護士