(※写真はイメージです/PIXTA)

先代の逝去や不採算分野の切り離しなど、さまざまな要因から会社を売りたいと考える経営者は少なくありません。注意すべきは、実際に会社の売却プロセスに入る前に「磨き上げ」を行う必要があるということです。企業価値を高めるのに欠かせない「磨き上げ」とはどのようなものでしょうか、みていきます。

事業承継やM&Aにおける「磨き上げ」とは?

磨き上げとは、事業承継や会社売却の前に行う準備プロセスのことを指します。磨き上げによって承継や売却が円滑に進むようになります。また、売り手側企業にとっては、自社の魅力を正しく表現することができ、よりいい条件での売却が可能になります。

 

磨き上げは大きくわけると、次の2つのことを行います。

 

[図表1]磨き上げでする2つのこと

 

1.買い手企業(引き受け手)にとってのリスクを軽減する

あなたの会社の財務的、法的、人的リスクを可視化し、それを低減するための手を打ちます。会社売却の際には、事業リスクは売却価格に影響します。リスクが高い会社ほど、価格は下がってしまいますし、リスクが少ない会社であれば事業が将来にわたって繁栄すると判断されるため有利な条件での売却が可能になるでしょう。

 

2.買い手企業(引き受け手)にとっての魅力を高める

逆に買い手企業(引き受け手)のとっての魅力を高めるのも磨き上げの役割です。具体的には自社の資産(目に見えない資産も含む)を可視化し、それを説明可能な状態にすることで、買い手企業にとっての魅力となります。

「磨き上げ」が必要不可欠な理由

会社の売却や承継は、多くの人にとって人生で1度限りのビッグイベントです。そのビッグイベントにあたって、自分がこれまで経営してきた労力に対するリターンを最大化するために、自社を正しく、魅力的に見せる必要があります。それが磨き上げというプロセスです。

 

たとえば、多くの中小・スモールビジネスでは、会社概要の資料や事業計画、業務マニュアルといったような基本的な資料も整ってない会社も多いですし、ウェブサイトも何年間もホッタラカシ、という会社も多いでしょう。

 

いくら財務的に優れていて、いい技術を持っていても、それを説明でき、外部から見ても魅力的に感じられるようにしておかなければ、非常にもったいない話なのです。

 

「磨き上げ」はタイミングが重要

ここから会社売却における磨き上げにフォーカスを当てて話を進めていきます。ただ、家族承継、社員承継の場合にも同じように磨き上げは機能しますので、ぜひご参考にされてください。

 

まず磨き上げは、仲介会社等に依頼し、売却のプロセスの前に行うべきものです。なぜかといえば、売却/交渉プロセスに入ってしまうと、とても磨き上げを行っている時間がないからです。そうなると、準備ができていないまま、交渉に入ってしまい、自社の価値を十分に魅せることなく売却価格が決まってしまったり、交渉が決裂してしまったりします。そのため、売却プロセスに入る前にスタートするのが吉です。

 

ちなみに磨き上げよりも前には、バリューアップ(価値向上)やスケールアップ(事業拡張)というプロセスがあります。これはそもそもあなたの会社の価値を高めるための根本的活動であり、組織の仕組みづくり、ビジネスモデルづくりなどが含まれます。

 

全体のタイムラインを図にすると以下のようになるでしょう。

 

[図表2]契約成立までのプロセス

 

次ページ磨き上げをすべき「10の分野」とは…

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