「舞台装置は大掛かりに」…詐欺師界の“常識”
詐欺師の世界では「舞台装置は大掛かりなほうがいい」と言われている。この言葉には客(被害者)に対して自らを大きく見せれば見せるほど客は信用し、その威厳にひれ伏すのでダマシ(シゴト)がやりやすくなるという意味が含まれている。
確かに着古しのスーツよりも最新のブランドスーツを着こなした人物のほうが優秀に見えてしまい、プレハブ小屋で儲け話をされるよりも高級ホテルのスイートルームで密かにされる儲け話のほうに信憑性を持ち、手書きの図面よりもコンピューターで設計された図面のほうが、より正確だと思い込んでしまう。人間の無意識下における権威への盲目的信頼性というものである。
2000年代にM資金話で数々の芸能人たちを騙した詐欺師は某財団法人の理事長を名乗り、打ち合わせは常に一流ホテルの一室を使用していた。
また同時期に発生した皇室を騙ったM資金詐欺事件で、犯人は被害者に対して「明治天皇の孫で日本全国を講演している」と偽り、権威付けしていた。
Zビルのレンタルオフィスは月の家賃が15万円からで、東京・丸の内の一等地にある。内装やフロア演出についてはチープなレンタル感が抑えられ、この立地に相応しい高級感が醸し出されている。それゆえ、ここがレンタルオフィスであると説明をされない限り、しっかりとした会社のオフィスと勘違いしてしまうだろう。
その住所に登記された『一般社団法人アジア経済協力会議所』という重厚な看板を掲げ、元事務次官の肩書を偽り、東京五輪関係の利権話や苦労話を当たり前のように語られたターゲットは「この人は丸の内の経済人だ」「日本経済界のやり手だ」と錯覚してしまうのだ。
蔵人会長に対するダマシの「流れ」
蔵人会長に対するダマシの流れは、まずXとYが過去にM資金話のネットワークで知り合った大学関係者のツテを頼りにして、2017年頃に蔵人会長と接触したことからはじまった。
会長は彼らの看板や見た目や人脈に対して「身なりもしっかりしていて本物だ」と思わされてしまったそうだ。
極めつけにXとYは「当法人がZビルの陰のオーナー(ビル全体のオーナー)である」と大ウソをついたという。これも自分たちのことを『大きく見せる手口』のひとつだった。
M資金詐欺の変形類似型で活躍した女詐欺師の天野光子も、自身のことを「国際興業創始者で帝国ホテル会長職も務め、ホテル王の異名を持つ大実業家・小佐野賢治の隠し子であり、正統な相続権者である」と大ウソをつき、ダマシの看板とした。
岩合直美はロールスロイスを乗り回して、自身が上流階級の住人に見えるように演出した。
詐欺師たちは自分を大物に見せることで、相手を信じ込ませることに長け「大物の私が、特別に、あなたにだけ、儲け話を教えてあげましょう」と相手の物欲心や自尊心を最大限に刺激することが巧妙なのだ。
藤原 良
作家、ライター
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