薬局を「処方せんナシ」でも入れる場所へ。内閣府調査で9割が知らなかった「健康相談できる薬局」とは?

薬局を「処方せんナシ」でも入れる場所へ。内閣府調査で9割が知らなかった「健康相談できる薬局」とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本発の「ロボット薬局」の開発に成功した薬局経営者・渡部正之氏は、薬剤師は今こそ単純作業や対物業務から解放されて、対人業務を中心とした薬剤師職能を発揮できるクリエイティブな立場へと進化していくべきだと言います。薬局が「処方せんがないと入れない場所」「薬をもらうためだけの場所」となっている今、薬局が目指すべきあり方の一つを見ていきましょう。

 

薬局を「処方せんがなくても入れる場所」へ

かつて薬局が町中にあった頃は、薬剤師が地域の人から健康相談を受けることなどはごく当たり前のことでした。ふらりと立ち寄って、一般用医薬品を買うだけではなく人によっては血圧を測ったり必要な衛生材料を買ったりすることもあれば、単に健康について気になることを相談だけして帰る人がいるのも日常だったのです。薬局は医薬分業が推進される前から、地域住民の健康を守る立派な担い手でした。

 

しかし政策誘導的に医薬分業が導入されてそこから一気に処方せんの発行枚数が伸び始めると、いつしか薬剤師は調剤に追われて、患者と向き合い健康相談に乗ることを忘れてしまいました。そして薬局は処方せんがなければ入れない場所になり、患者のほうも「気になることがあれば薬剤師に相談しよう」とは思わなくなってしまったのです。

 

薬局は今こそこうした状態を打破し、薬局・薬剤師は地域住民の健康を守る、いわば健康ソムリエのような役割を果たすべきだと私は考えています。

「平均寿命と健康寿命の差」が一向に縮まらない日本

日本人の寿命は年々延び続けています。厚生労働省の「令和2年簡易生命表の概況」によれば、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳で、いずれも過去最長を記録しました。この寿命は世界でもトップクラスです。平均寿命が公表されている国・地域のなかでは、女性は香港に次いで2位、男性は香港とスイスに次いで3位でした。

 

一方で、目指すべきは平均寿命だけではなく、健康寿命の延伸です。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指しています。

 

2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっていて、健康寿命と平均寿命の差は男性が約9年、女性が約12年となっています(厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」)。

 

2001年と比べてみると、平均寿命も健康寿命も男女とも延びています。しかしながら平均寿命と健康寿命の差は、一向に縮小していないのです。健康寿命が延びなければ平均寿命が100歳になったとしても、寝たきりや要介護の期間が延長されるだけです。それは高齢者本人にとって幸せなこととはいえません。また日本全体で考えても、医療費や介護費などの社会保障費の増大につながり、現役世代に重く負担がのしかかります。

9割が知らない…疾病予防を担う「健康サポート薬局」

こうした状況を改善し、健康寿命の延伸に薬剤師が貢献するためにできたのが健康サポート薬局です。健康サポート薬局とはかかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、一般用医薬品や健康食品に関すること、さらに介護や食事・栄養に関することまで健康に関することを幅広く相談できる薬局のことです。薬局を地域の健康拠点とするべく、2016年の4月からスタートしました。

 

健康サポート薬局には地域住民による主体的な健康の維持や、医薬品等の安全かつ適正な使用に関する助言を行い健康の増進を積極的に支援すること、健康の維持・増進に関する相談を幅広く受け付け必要に応じてかかりつけ医をはじめ適切な専門職種や関係機関(医療機関、行政機関等)に紹介することなどへの取り組みが求められています。地域の薬局のなかで率先して地域住民の健康サポートを積極的かつ具体的に実施し、地域の薬局への情報発信や取組支援等を実施することも、重要な役割の一つです。

 

またこれらのことを実行するために、ソフト面とハード面のそれぞれで必要な要件を満たすことが求められています。例えば関係機関との連携体制では、かかりつけ医と連携して受診勧奨することなどが挙げられます。さらには一定の研修を修了した薬剤師の配置や土日の一定時間の開局に加えて、地域住民の健康サポートに対する具体的な取り組みも求められているのです。要指導医薬品や衛生材料、介護用品に関する供給機能も担う必要があります。

 

このように薬局が地域の健康拠点となるような要件を備えれば、患者が健康相談のファーストアクセスとして再び薬局に足を運ぶようになると思います。ところが実際には、健康サポート薬局の届出をしている薬局の数はたったの2724にとどまっています(2021年9月末時点)。これは全国に約6万の薬局があることを考えると、あまりに少ない数だといわざるを得ません。

 

各地では健康フェアや禁煙サポート、糖尿病予防、ロコモティブシンドローム予防などに積極的な試みが行われています。しかし一方で、内閣府が2020年10〜11月に行った薬局の利用に関する世論調査では健康サポート薬局を知らない人が9割に上るなど、認知度は遅々として上がりません。

 

もちろんこれだけの機能をすべて一度に備えることは難しいかもしれませんが、方向性として薬局・薬剤師が目指すのは、このように地域の健康を幅広く担える薬局であるはずです。ロボット化、ICT化によって効率化を進めた先の、薬局が目指すあり方の一つとして健康サポート薬局を目指すことは意味があると私は考えています。

 

 

渡部 正之

株式会社メディカルユアーズ 代表取締役社長、薬剤師

 

兵庫県神戸市出身。薬学部卒業後、製薬会社のMR、薬局薬剤師を経て、2011年にメディカルユアーズを創業。2019年3月に日本初のロボット薬局(自動入庫払出装置)を大阪梅田で開発した。薬局業界の旧態依然とした体質に危機感をもち、ロボット、ICT、AIを用いた自動調剤技術の研究開発に積極的に取り組むなど異端児として新たな展開を行う。

薬剤師の本来の職能発揮を提唱し、職能レベルの向上・職域拡大、働きやすい環境づくりに力を注いでいる。

 

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    ※本連載は、渡部正之氏の著書『ロボット薬局 テクノロジー×薬剤師による薬局業界の生き残り戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    渡部 正之

    幻冬舎メディアコンサルティング

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