貧血が「免疫力低下」につながる理由
一般に、鉄分が不足すると貧血になりやすいことはよく知られています。これは、血液の成分の中でも、身体中に酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなるためで、鉄分はこのヘモグロビンを合成するのに欠かせないミネラルであることがわかっています。
貧血は免疫力を低下させる大きなリスク要因の一つです。免疫を担う細胞も、血液から酸素や栄養を受け取って生きています。その供給元であるヘモグロビンが少なくなれば、ほかの細胞と同じように、免疫細胞もエネルギー不足に陥り、活性が低下してしまいます。
また、免疫を担う細胞は血液中に多く存在し、体内に侵入した外敵を排除するため、血流にのって全身をパトロールしています。貧血で十分な血流が得られなければ、免疫の働きも身体のすみずみまで行き届かなくなり、さまざまな病気や不調を引き起こす遠因となります。
なお、鉄分はコラーゲンの合成にも必要なミネラルであることがわかっています。コラーゲンといえば、皮膚の奥でハリを保つなどの機能があるタンパク質の一種であり、美容に関心の高い女性にはなじみ深い成分だと思いますが、コラーゲンは皮膚だけに存在するのではありません。
実は内臓や血管、骨などにも多く含まれ、人体の全タンパク質量の、実に3分の1を占めているとされているのです。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違いとは?
それでは、鉄分を効率良く摂るにはどうしたら良いでしょうか。鉄分を多く含む食材で、昔からよく知られているのが「ほうれん草」です。しかし、ほうれん草だけを食べてさえいれば、身体に必要な鉄分が補えるわけではありません。
鉄分は、タンパク質と結びついているかいないかで、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」とに分けられます。貧血によって不足するヘモグロビンは、ヘム鉄とグロビンというタンパク質から構成されています。
したがって、貧血を解消するにはヘム鉄とタンパク質を意識して摂ることが大切なのです。非ヘム鉄も鉄分として身体に取り込まれますが、その吸収率は2~5%程度にすぎません。
一方、ヘム鉄の吸収率15~25%程度で、非ヘム鉄の5~6倍にのぼります。疲労回復に肉が良いことはすでに解説しましたが、ヘム鉄を多く含む肉は貧血対策にもとても大事な食品なのです。
そして、血液が十分につくられめぐりが良くなることは当然、免疫力アップにもつながります。
[図版] 鉄分が豊富な食材