(※画像はイメージです/PIXTA)

NHKは2023年1月10日、2023年度の予算と事業計画を発表しました。その内容がマイナス280億円の「赤字予算」だったということが話題を呼んでいます。受信料制度への批判が高まり、受信契約者の減少が続き、しかも10月から受信料値下げが決まっているなど、厳しい状況が続く見通しです。NHKは今後、存在意義を示していくことができるのか。NHKに関する問題点について解説します。

NHKの受信料強制徴収制度の是非

第二の問題は、NHKの受信料強制徴収制度(放送法64条1項)が、憲法に違反しないかということです。

 

放送法64条1項は、NHKの放送を受信できるテレビを設置したらNHKと「受信契約」を締結し、受信料を支払わなければなければならないと定めています。

 

NHKは民間の放送局と異なり、CMを流していません。これは前述した「独立性・公正性」を担保するためです。特定のスポンサーや政治権力の意向に拘束されてはならないからです。

 

そうなると、財源をどう調達するのかという問題が発生します。そこで、法律で受信料の制度が定められているのです。

 

問題は、それを強制徴収する制度設計が、個人の「知る権利」(憲法21条)等を侵害し憲法に違反していないかということです。

 

この点については、最高裁判例があります(最判平成29年(2017年)12月6日)。論旨はおおむね以下の通りです。

 

・放送は国民の知る権利(憲法21条)を充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。

 

・放送の不偏不党、真実、自律を保障することにより、放送による表現の自由を確保する必要がある。

 

・そのために、「公共放送」と「民放」が互いに啓蒙しあい、欠点を補いあうことができるように、二本立ての体制がとられている。

 

・NHKは「公共放送」であり、国家権力や、広告主等のスポンサーの意向に左右されず、民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体として性格づけられている。

 

・したがって、放送法は、NHKが営利目的として業務を行うことや、スポンサー広告の放送をすることを禁じており(放送法20条4項、83条1項)、その代わりに、財源確保の手段として、受信料の制度が設けられている。

 

・受信料の金額については毎事業年度の国会の承認を受けなければならず、受信契約の条項についても総務大臣の認可・電波監理審議会への諮問を経なければならないなど、内容の適正性・公平性が担保されているので、そのような受信契約を強制することは目的のため必要かつ合理的である。

 

この判旨からは、「NHKは必要である」という立場に立っていることが明らかにみてとれます。その根拠は、NHKの強度の公共性・独立性・自律性にあります。

 

それらを確保するために、財政的基盤を確保する手段として、受信料の制度が必要だというのです。

 

また、受信料の強制徴収についても、国会の承認、総務大臣の認可等の手続きにより、内容の適正性・公平性が担保されていることを理由に、必要かつ合理的な制度だとしています。

結局は「公正性・中立性」

このように、受信料の強制徴収の制度が合憲・正当とされる根拠は、結局のところ、NHKの強度の公共性・独立性・自律性に求められます。

 

現に公共放送としてのNHKが存在し、強制徴収の制度がとられている以上、NHKの経営陣やそこで働く人々には、公共放送としての役割に徹する不断の努力が求められます。

 

また、私たち国民も、「不要論」「必要論」のいずれに立つにしても、NHKの公共性・独立性・自律性が損なわれていないか、たえず厳しい監視の目を向けていく必要があります。

 

 

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