(※写真はイメージです/PIXTA)

「成年後見人制度」は、認知症などによって判断能力が低下した人の財産管理や生活に必要な契約を代理人が行うことで、円滑に進めるための制度だ。しばしば問題点が指摘されるこの制度だが、相続に大きな影響を与える成年後見人制度のメリットやデメリットについて、行政書士であり、静岡県家族信託協会代表を務める石川秀樹氏が、具体的な例を交えて解説する。今回は、「後見制度を相続発生後に利用した場合」についてシミュレーションする。

専門職後見人が付くことを何とか食い止めたとしても──

母親自身の財産は600万円あるため、家族が後見人になれる可能性は実際に0ではない。だが甲さんが前述のように「Aに頼みます」と遺言に記したとしても、その通りにはならないだろう。

 

「遺言の趣旨に沿ってAが後見するのだから問題ないじゃないか」とも思えるが、家庭裁判所はそのようには判断しないと想像する。遺産相続と自宅売却含みなので、財産管理については専門職後見人に交代させる可能性がある。

 

それを何とか食い止めたとしても、Aには「後見監督人」が付されることになるだろう。

成年後見制度を利用しない場合の“最善策”

ここまで見てきたように、成年後見制度の利用はどのタイミングで行なっても、相続に大きな影響を与える。

 

それを避けたい場合は、家族信託が有効である。甲さんに認知症などの恐れがなくてもあえて委託者となり、甲さんの資産を信託して自分なき後の受益権を母親に承継させる。これで後見なしに、家族の手で母親を生涯守ることができる。

 

このような制度があることを知っているか否かで、相続の様相はがらりと変わってくるのだ。

 

 

石川 秀樹

静岡県家族信託協会 行政書士

 

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