米国の求人件数が歴史的な高水準を維持。市場は香港ハンセン指数が5日ぶりに反落。今夜に控える米雇用統計に注目 (画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 20,991.64 pt (▲0.29%)
中国本土株指数 7,143.64 pt (▲0.40%)
レッドチップ指数3,893.89 pt (+0.40%)
売買代金1,482億8百万HK$(前日1,741億6百万HK$)

4日に発表された12月の米ISM製造業総合指数は2年7ヵ月ぶりの低水準

2023年、新年の株式市場は一進一退の動きが続き、方向感を見いだせないでいる。景気の先行きとインフレ抑制のために必要な金融引締めをめぐって、市場参加者と金融当局の間にはギャップがあることは、昨年来指摘してきたことだが、材料も強弱が混在し、見通しが立てづらい状況が続いている。

 

5日に発表されたADP雇用者数は、6日発表の雇用統計の手がかりとなる。新規失業保険申請件数は市場予想を下回り、雇用市場が堅調であることを示唆する内容だった。

 

22年11月の米求人件数も、依然として歴史的高水準を維持し、市場予想を上回った。
6日に発表される米雇用統計でも、雇用市場の力強さが確認されるとなれば、株価にとってプラスの材料とはならないだろう。

 

FRB高官は、政策金利の高止まりが長期化することを示唆しているが、実際にそうなった場合、リセッションリスクの上昇は避けられない。

 

また、4日に発表された12月の米ISM製造業総合指数は48.4と2年7ヵ月ぶりの低水準となり、投入価格指数は39.4と9ヵ月連続で下げた。

 

ただ、これらの数値はFRBに対するリセッションリスクの警鐘にはならず、雇用市場に変調が見られない限り、昨年来のパウエルFRB議長やバー副議長の発言どおり、政策金利は長期間にわたり高止りするのではないか。

 

注目すべきはFRBが最終的な政策金利の最高到達地点(ターミナルレート)をどこまで上昇するか、金利の低下が始まる時期がいつになるかであるが、足元の雇用が堅調な限り、米当局が引き締めを改めるとは考えにくい。

香港ハンセン指数は5日ぶりに反落

6日の香港市場は序盤、高く寄りつき、上げ幅を広げる場面もみられたが、午後に失速した。米中のデカップリングが続いていたが、さすがに続かなかった。前日まで4日続伸していたこともあり、上値は抑えられた。ただ中国当局の経済対策に期待がかかるなど、下値は底堅く、前日比0.29%安と5日ぶりに小幅反落した。

 

ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比1.4%安とアンダーパフォーム。自動車メーカーが下落に転じ、電気自動車メーカーの小鵬汽車(9868)は6.8%安、理想汽車(2015)は6.6%安、新興EVメーカーのNIO(9866)は4.0%安と下げた。

 

中国政府が昨年末に電気自動車の補助金を終了したことで、販売価格を据え置くか注目が集まるなか、米テスラが中国での販売価格を昨年10月に続いて再び引き下げたことで、競争激化の懸念が強まった。

 

リオープン銘柄も売られ、中国南方航空(1055)は5.0%安、中国東方航空 (0670)は3,3%安、中国国際航空(0753)は2.7%安と下げた。カジノ関連も下落し、銀河娯楽(0027)は3.5%安、金沙中国(1928)は2.9%安、ウィンマカオ(1128)は2.2%安と下げた。

 

一方、不動産株が上昇。不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は1.72%と上昇した。中国人民銀行と銀行保険監督管理委員会は5日、住宅ローン金利緩和策を一部の都市で継続すると発表した。

 

一部都市では、住宅ローン金利下限を撤廃できるよう、不動産市場の健全な発展と経済の安定的かつ持続可能な今後に向けて取り組むことを示した。中国の不動産業支援策に期待する買いは継続している。

 

本土株市場は上海総合指数は前日比0.08%高の3,157.64と5日続伸、CSI300は0.31%高の3,980.89で引けた。来週から約3年にわたって閉鎖していた国境を開放する期待は高まったもの、連日の上昇で上値は抑えられた。

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

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    Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者 国際金融ストラテジスト <在香港>

    京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
    2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
    世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。

    ● 個人公式サイト
     「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)

    著者紹介

    連載国際金融ストラテジスト長谷川建一の「香港・中国市場Daily」

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