M&Aではバリュエーションで「事業価値」を算出
M&A実施時には『バリュエーション』において、事業価値を算出します。計算の仕方が大企業と中小企業で異なる点に注意し、それぞれどのような方法が用いられるのか見ていきましょう。
大企業ではDCF法が使われる
非事業用資産や借入金のない企業は、企業価値=事業価値=株主価値といえます。ただし現実の企業は非事業用資産を保有していたり、融資を受けていたりするケースがほとんどです。
そこで、大企業の事業価値を算出するために利用されるのが『DCF法』とされています。将来生み出されるキャッシュフローに着目する手法で、非常に合理的な企業価値評価方法です。DCF法では以下の手順で事業価値を算出します。
1.加重平均資本コスト(WACC)を計算
2.企業が自由に使えるフリーキャッシュフローを予測
3.継続価値を算定
4.フリーキャッシュフローと継続価値をもとにWACCで割り引いて事業価値を計算
中小企業の場合は?
大企業で重視されるDCF法は、中小企業には向いていません。中小企業で用いられるのは『企業評価額=時価純資産+営業権(のれん)』という計算式です。
営業権には、企業のブランド力や人的資源・取引先など、帳簿では評価できない価値が含まれています。企業の現時点での価値に加え、今後の収益力も考慮した価値を算出できる計算式です。収益力を正しく評価するため、営業権の価値を求めるときには実質利益の評価倍率を調整します。一般的には実質利益の3年分としますが、業種によっては1年分で計算するケースもあるでしょう。
会社の価値を高めるには
バリュエーションにより算出される会社の価値を高めるには、事業の収益力と投資効率がポイントです。それぞれどのように扱うと会社の価値を高められるのでしょうか?
事業の収益力を強化する
まず実施するのは事業の『収益力』アップです。事業の収益が向上すれば会社の成長につながり、価値が高まっていきます。
ただし収益とともにコストも高まれば、単に全体の規模が大きくなるだけです。そこで事業モデルの見直しを実施します。コスト削減と利益アップを意識したビジネスモデルが適切です。たとえば資金や人材などのリソースの配分や、事業に必要なコストの削減、業務フローの効率化などができないか検討しましょう。
投資効率の見直しと改善
『投資効率』の見直しも欠かせません。たとえば保有している資産の中に無駄なものが多い場合、投資効率は下がります。不要な資産を売却すれば、売却によって得た資金の再投資が可能です。
加えて『売上金』の早期回収も、投資効率の改善につながります。モノやサービスを売っただけでは、会社に現金が入ってきません。できるだけ早く代金を回収できれば、投資に回せる資金が増えます。
さらに回転率の悪い在庫を減らせばキャッシュフローの改善につながり、投資効率の向上が実現可能です。
会社の価値がどう決まるか知っておこう
会社の価値を示す指標は複数あります。エンタープライズバリューは事業価値を意味する言葉です。事業価値は企業価値とは異なります。企業価値が企業の持つ価値全てを表すのに対し、事業価値は事業の持つ価値だからです。『企業価値=事業価値+非事業価値』と表せます。
M&Aでは会社の価値を高めることも重要です。事業の収益力を高めるため、ビジネスモデルの改善を目指しましょう。不要な資産の売却や売上金の回収による投資効率アップもポイントです。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】