2.巧妙な財産隠しを調査するのは容易ではない
離婚をする際に、相手方に財産分与を請求できることがあります。
財産分与とは、共同生活によって夫婦が形成した財産の分配、離婚後の生活保障、離婚の原因を作ったことへの損害賠償といった観点から、財産を分けるように求めることをいいます。
財産分与を請求された者が財産を隠そうとすることは、珍しいことではありません。
ところが、配偶者間であっても、相手が協力してくれない場合に、相手が保有している全ての財産を確認する方法は存在しません。また、ひとまとめに財産を隠すといっても、多様な方法が考えられます。
そのため、このような方法をとれば財産隠しをすべて発見できるという便利な方法は存在しません。
そして、巧妙に財産の一部を隠されてしまった場合、それを発見することは容易ではありません。少しでも相手が財産を保有している手掛かりがないか探すしかないといえます。
財産を探すうえで重要な手掛かりとしては、銀行口座の取引履歴などが挙げられます。銀行口座の取引履歴からは、不自然な金銭の履歴がないか確認することができます。
ほかには、金融機関からの郵便物や通帳の存在などから口座の存在を推測したり、納税通知書が届いていることなどから不動産を保有していることが推測したり、株主総会招集通知から株を保有していることが推測したりすることができます。
このように相手が財産を保有している手掛かりを思い返しながら探していくことによって、相手が隠している財産の発見に繋がることがあります。
有責配偶者による離婚請求が認められる要素
不貞などの婚姻関係を破綻させた原因について責任のある配偶者(「有責配偶者」と呼ばれます。)が裁判で離婚を請求しても、裁判所は原則として離婚を認めません。
例外的に次のような要素がある場合には、有責配偶者からの離婚請求を認めます。
①夫婦の別居が相当長期間に及んでいる
②夫婦の間に未成熟の子が存在しない
③離婚請求を認めることが著しく社会正義に反する事情がない
これらのうち、①夫婦の別居が相当長期間に及んでいるというのは、少し抽象的であることからもう少し詳細に見ておきましょう。
どの程度の期間別居していれば相当長期間であると裁判所が評価するのかについて、一律に何年という基準があるわけではありません。別居期間は、両当事者の年齢及び同居期間などと対比したうえで、長期間と評価できるか否かを判断します。
そのため、たとえば別居期間が同じ8年程度でも裁判所の判断が分かれることがあります。
具体的には、約8年の別居期間を相当長期間に及んでいるとはいえないと評価した判例(最高裁判決平成元年3月28日)があるほか、約8年の別居期間でも有責配偶者が誠意のある対応をしていることなどから相当長期間に及んでいると評価する余地があることを前提とする判断をした判例(最高裁判決平成2年11月8日)があります。
一般的には概ね別居期間が10年以上に及ぶことをいうとしている書籍もあります。
相当の長期間にあたるか否かについては、具体的な夫婦の事情によっても評価が異なるだけでなく、多くの裁判例も存在することから、弁護士に相談したうえで、どの程度別居をすれば相当長期間であると評価されるか確認すると良いでしよう。