(画像はイメージです/PIXTA)

不動産を相続する場合、所有権の移転のために、不動産の登記の名義変更が必要です。これを「相続登記」といいます。また、2024年4月より相続登記が義務化され、相続人は相続を知った日から3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

不動産の「名義変更」で必須となる手続き

生徒:先日他界した母の相続財産には、実家の土地と建物がありました。これらの名義変更をおこなう必要があると思うのですが、どのように手続きを進めていけばいいのか教えてください。

 

先生:不動産の名義変更が必要ですね。法律用語では、名義変更のことを「所有権移転の登記」といいます。お母様から相続人へ所有権を移転させるための相続登記ですね。

 

★不動産の相続登記についてはこちらをチェック

【相続】不動産の相続登記についての必要書類や手続き方法を分かりやすく解説

不動産の相続登記の必要書類、どのようなものがある?

生徒:相続登記には、どんな必要書類を用意する必要がありますか?

 

先生:相続登記のための必要書類は、「不動産に関する書類」と「戸籍に関する書類」を集めなければいけません。不動産に関する書類は、「固定資産税評価証明書」「名寄帳」「登記簿謄本」の3つですね。

 

生徒:それらはどこで手に入れるのでしょう?

 

先生:「固定資産税評価証明書」と「名寄帳」は、その不動産が東京23区にあれば都税事務所、それ以外にあれば、市町村役場の窓口で取得することができますよ。「固定資産税評価証明書」は、相続登記の申請をおこなう年度のものが必要となることに注意が必要です。「登記簿謄本すなわち全部事項証明書」は、法務局で取得することができます。郵送で取得することも可能ですよ。

 

生徒:では、戸籍に関する書類はどのようなものがありますか? 戸籍謄本や住民票ですよね?

 

先生:遺言書の有無によって、必要書類が異なりますよ。また、不動産を取得される方が、法定相続人以外の場合も異なるので、よく注意してくださいね。

 

●遺言書がある場合の必要書類

生徒:では、「遺言書があった場合」の必要書類はなんでしょうか?

 

先生:遺言書で不動産を相続する方が指定されていた場合、亡くなった事実が分かる戸籍謄本と住民票の除票、相続される方の戸籍謄本と住民票ですね。

 

生徒:相続登記では、法定相続人を確定するために、被相続人の出生に遡って戸籍謄本を取得しなければならないと聞きました。死亡時の戸籍謄本だけでは足りないのではないですか? 出生から死亡まで、すべて必要ですよね?

 

先生:いいえ。遺言書がある場合は、法定相続人を確定する必要がないから、死亡時の最後の本籍地の戸籍謄本だけでいいんですよ。

 

生徒:それは簡単ですね!

 

先生:そして、「遺言執行者が指定されている場合」は、遺言執行者の実印と印鑑証明書が必要になります。「遺言執行者が指定されていない場合」は、相続人全員の実印と印鑑証明が必要です。

 

●遺言書がない場合の必要書類

生徒:遺言書がない場合の必要書類はなんでしょうか?

 

先生:遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をおこなって、遺産分割協議書を作成することが必要になります。遺言書がある場合とは異なり、亡くなった方の出生から死亡まで連続した戸籍謄本と住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、相続される方の住民票、相続人全員の実印と印鑑証明書等が必要ですよ。

相続登記において必要となる「被相続人の戸籍謄本」

生徒:「法定相続情報証明制度」を利用することもできますか?

 

先生:はい。法定相続情報証明制度を利用することも可能ですよ。その場合、法定相続情報一覧図の写しを提出することで、亡くなった方の出生から死亡まで連続した戸籍謄本、相続人の戸籍謄本の添付に代えることができます。

 

生徒:法定相続情報証明制度を利用するときであっても、一度は出生までさかのぼって戸籍謄本を取得しなければいけませんよね。手続きに時間がかかりそうですね。

 

先生:戸籍謄本の取得は、とても時間のかかる作業です。専門的知識がなければ取得が困難な場合もありますし。それに、亡くなった方の離婚、養子縁組、本籍地の移動が多いと、取得する戸籍謄本の数は多くなりますよね。「改正原戸籍」や「除籍謄本」を取得することもありますから…。

 

生徒:郵送で手続きすることは可能ですか?

 

先生:遠方の市区町村役場であれば、郵送で申請したほうがいいでしょう。各市区町村が定める様式の交付申請書に必要事項を記載して印鑑を押印し、申請する人の戸籍謄本、本人確認書類のコピー、手数料を支払うための定額小為替、切手を貼った返信用封筒を送る必要があります。

 

生徒:手数料はいくらでしょうか?

 

先生:亡くなった方の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要ですが、それが何枚あるか、市区町村役場で調べなければわかりません。つまり、申請する段階では、発行してもらう戸籍謄本の種類も数もわかりませんから、手数料がいくらになるかもわからないんです。

 

生徒:それなら、手数料を支払うための定額小為替はいくら買えばいいのでしょう…?

 

先生:定額小為替は少し多めに、5通分くらいの金額を買えばいいでしょう。不足する場合は不足分を追加で郵送しなければいけないので、面倒なんですよね。余った分は返してもらえますから、心配ありません。

 

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【法定相続人】民法での相続人は誰?子ども・親・兄弟の順位をわかりやすく解説【FP3級】

必要書類がすべて揃ったら、法務局に提出!

生徒:先生、ありがとうございます。では、必要書類がすべて揃ったときは、法務局に提出すればいいのでしょうか?

 

先生:はい。法務局の窓口へ行って申請すればいいですよ。忙しいなら、郵送やインターネットでも申請できます。ただし、書類に不備があったときの修正が厄介なので、窓口に行って確認してもらったほうが早いでしょう。

 

生徒:必要書類は返却されるのですか?

 

先生:提出後に原本返却を依頼すると、遺言書、遺産分割協議書、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書は返却してもらえますよ。

 

生徒:相続登記が完了したときは、どうなるのでしょう?

 

先生:不動産を管轄している法務局で相続申請すると、2週間ほどで相続登記が完了します。登記完了予定日に法務局へ行くと「登記識別情報通知」を受け取れます。これは、権利証、登記済証に代えて発行される書類で、重要な書類ですから、大切に保管しておかなければいけません。申請の際に切手を貼った返信用封筒を渡しておけば、郵送してもらうことも可能です。

 

生徒:とても大変そうですね! 私に相続登記の手続きができるのかな…?

 

先生:一般の人には難しいかもしれませんね。多少は費用はかかっても、司法書士に任せた方が安心ですよ。

 

生徒:わかりました。そうします!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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