(画像はイメージです/PIXTA)

亡くなった方の生命保険(死亡保険金)の請求手続きや、相続における保険金の扱いについて頭を悩ませる方は少なくありません。ここでは保険金の請求手続きのほか、相続における保険金の扱いについての基本的事項を見ていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「亡き母が私を生命保険(死亡保険金)の受取人に…」

生徒:先日亡くなった母は、私を受取人とした生命保険に加入していたらしく、死亡保険金がもらえるようです。死亡保険金を生命保険会社へ請求する手続きについて教えていただけませんか?

 

先生:生命保険の受け取りは何度も経験することではありませんから、わからないですよね。

 

生徒:そうなんです…。仕事も忙しいし、面倒だし、妹に代理で手続きしてもらいたいな。家族なら大丈夫ですよね?

 

先生:いいえ。基本的には、受取人に指定されている方が、請求手続きをおこなわなければいけません。ただし、亡くなった方が契約者ではない場合については、受取人だけでなく、契約者が請求することも認められていますよ。

 

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相続時の生命保険(死亡保険金)には請求期限がある

生徒:死亡保険金の請求には期限がありますか?

 

先生:期限は「請求権が時効で消滅するまで」ということになりますね。生命保険を請求する権利は、3年間で消滅してしまいますよ!

生命保険(死亡保険金)の請求に必要な書類

生徒:請求する手続きの必要書類には、どのようなものがありますか?

 

先生:提出する必要書類は、被保険者に関する書類として、保険証書、戸籍謄本または住民票の除票、死亡診断書が必要です。受取人に関する書類としては、本人確認書類、戸籍謄本と印鑑証明書です。生命保険会社への支払請求書も書くことになるでしょう。必要書類は生命保険会社によって違いがあるので、請求手続きをおこなうときに電話で問い合わせをしたほうが安心ですよ。

生命保険金(死亡保険金)は相続財産? 非課税枠は?

生徒:生命保険の死亡保険金って、けっこう大きい金額になりますよね…。相続税がかかるのでしょうか?

 

先生:死亡保険金は相続財産ではないけれども、亡くなった方が保険料を支払っていた場合、相続財産とみなされて相続税がかかりますよ。

 

生徒:えーっ! 相続財産じゃないのに、相続税がかかるんですか?

 

先生:そうなんです。ただし「法定相続人の数×500万円」の非課税枠があるから、その枠内だと相続税は発生しません。お母様の法定相続人は何人ですか?

 

生徒:私と弟と妹の3人です。

 

先生:それなら「500万円×3人」となって、1,500万円までは相続税はかかりませんよ。

 

生徒:なるほど…。相続人の数が多いほど非課税枠は増えるので有利ということですね。

 

先生:そうですね。生命保険は、残されたご家族の生活を支えるためのものなので、一定額までは非課税にしているんです。

相続放棄しても、死亡保険金は「受け取れる」が…

生徒:しかし、相続放棄してしまった場合には、死亡保険金を受け取ることはできませんよね?

 

先生:いいえ。相続放棄していても、受取人に指定されていたのであれば、死亡保険金を受け取ることはできます。ただし、相続放棄すると、相続人という立場にはありませんから、非課税枠は使えないのです。そのため、全額に相続税がかかることになりますよ。非課税枠というのは、相続人しか使えないものですからね。

もし受取人の方が先に死去したら…?

生徒:ところで、受取人として指定された人が、被保険者よりも先に亡くなっていた場合はどうなるのでしょうか? もし受取人の変更手続きをおこなわないまま、被保険者も亡くなったとしたら…。

 

先生:受取人が遺言書で次の受取人を指定していなければ、先に亡くなった受取人の法定相続人が、死亡保険金の受取人になります。法定相続人が複数いたなら、法定相続分ではなく、均等に分けて受け取ることになります。

契約者が「被相続人ではない」場合の相続手続き

生徒:先生、ありがとうございます。契約者と被保険者が母、受取人が私の生命保険の場合、私が死亡保険金を受け取ること、非課税枠を超える部分に相続税が課されることがわかりました。では、もし「契約者と受取人が母親、被保険者が私」の生命保険の場合はどうなるのでしょうか?

 

先生:その場合、被保険者が死亡したわけではないので、死亡保険金は支給されませんよね。そもそも、子どもが親より先に亡くなることを想定した生命保険契約に意味があるのかわかりませんが、ときどき契約しているケースがあるようです。この場合は、保険契約の権利は、子どもに相続されるので、相続発生日の解約返戻金相当額が「生命保険契約に関する権利」として相続財産となります。そして、生命保険契約は、相続人全員が共有する財産となって、契約が継続することになるんですよ。

 

生徒:生命保険契約の相続ですか! その場合、相続税はかかるのでしょうか?

 

先生:解約返戻金相当額が相続財産となるということですから、当然に相続税がかかることになります。ただし、死亡保険金のような非課税枠の適用はありません。解約して返戻金を受け取った場合でも、非課税枠の適用はありませんよ。

 

生徒:相続人で契約を共有し続けることは可能なのでしょうか?

 

先生:この場合、相続人のなかの1人が、契約の契約者となって継続するか、それができなければ、契約を解約しなければいけません。契約を継続する場合であれば、被保険者であるあなたを契約者とし、受取人をあなたの子どもに変更するのが一般的なやり方ですね。

死亡保険金の受取人、きょうだいで自分ひとりだけ…

生徒:母の死亡保険金の受取人が、私たち3人きょうだいのうち私1人だけとなると、弟や妹が不満を持つかもしれませんよね。

 

先生:なるほど、受取人はあなた1人なんですね。その場合は確かに不公平ですよね。それは、相続財産で調整するしかないと思います。遺産分割協議のときに、話し合ってみるべきでしょう。

 

生徒:わかりました。きょうだいで喧嘩しないよう、じっくりと話し合いたいと思います。

 

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「ほかにもまだ、保険契約があるかも…」探す方法は?

生徒:ただ、気になるのは、なぜ私ひとりしか生命保険に加入していなかったのかということなんです。もしかしたら、ほかにも保険契約があったかもしれませんよね。調べることはできませんか?

 

先生:亡くなった方が遺言書を書いていた場合はわかるのですが、遺言書がない場合は、相続人が自ら探し出す必要があります。

 

生徒:どうやって探せばいいのでしょう?

 

先生:方法としては、お母様の遺品のなかに保険証書がないかよく探すこと。保険契約の手がかりが残されていないか、調べていくことですね。

 

生徒:どんな手がかりがあるのでしょう?

 

先生:預金通帳に生命保険料の引き落としがあれば、保険契約があるということです。確定申告書に生命保険料控除の記載があれば、そこも手がかりになります。どうしても手がかりが見つからない場合は、相続人が生命保険会社に問い合わせることもできますよ。

 

生徒:わかりました! ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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