<茂木健一郎のワンポイント解説>
出題ではYouTubeを例にしました。よく言われる同様の命題で、「なぜ、日本ではGAFAのような企業が生まれないのか?」というものもあります。皆さんも1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
前提として「どうせ生まれないのだから議論するだけ無駄だ」というご意見もあるかもしれませんが、こうした議論をすること自体、大切なことです。なぜなら、こうした議論から自分の中のイメージ力を育てることができるからです。
ちなみに、ここでの正解は①です。少なくともYouTube的な動画サイトの開発について、日本で障害になったのは①だったのです。②③はそういう側面もあるかもしれませんが、それが日本企業からYouTubeが生まれなかった原因かどうかは検証できないので、どちらも正解とはいえません。
“事前”処理型の日本と、“事後”処理型の欧米
それというのも、YouTube的なシステムやルールでは、どうしても著作権などにも抵触する違法動画がアップされてしまいます。YouTubeが開発された当時、インターネットが世界中をつなぎ、動画をアップロード可能な回線が整備され……という与えられた環境条件は多くの先進国で同じでした。
ですから、もちろん日本人や日本企業の中でも動画共有サイト、動画視聴サービスのアイデアはありました。ところが、当時の日本の大手企業では「リスクが大きすぎる」ということでそうしたビジネスには手を出せませんでした。
似たようなことはUberでもありました。これは、事前処理型の日本企業と、事後処理型の欧米企業の大きな差だと言えます。
日本企業の場合、起こり得るトラブルや想定される問題について事前に回避しようとしがちです。そうした慎重派な考え方に対し、欧米では、「まずはやってみよう、トラブルや問題は起きたらそのときに考えればいい」という事後処理型の考え方が主流なのです。このギャップこそが日本の企業、もっと言えば日本全体の課題ともいえ、新しいイノベーションを起こす文化が育たない理由の1つになっています。
茂木 健一郎
理学博士/脳科学者
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