◆企業変革要件(X要件)
次に、企業変革要件(X要件)は以下の通りです。
〈企業変革要件(X要件)〉
1. 計画の実施期間が5年以内であること
2. 全社の意思決定に基づくこと
3. 売上高の向上(※改正により新設)
4. 財務の健全性
5. 海外売上高(※改正により新設)
【X要件1】計画の実施期間が5年以内であること
情報技術事業適応に関する計画(事業適応計画)の実施期間が5年以内であることが必要です。
【X要件2】全社の意思決定
「全社の意思決定」は、組織全体としての意思決定でなければならないということです。一部門・一事業拠点にとどまるものは対象となりません。
株式会社であれば、取締役会決議あるいはこれに準じる手続きを経ることが要求されます。また、取締役会を設置していないオーナー企業においては、株主総会決議が必要です。
【X要件3】売上高の向上(※改正あり)
次に、「売上高の向上」の要件です。従来は「生産性向上または新需要の開拓」の要件だったのが撤廃され、2023年4月1日以降、以下の要件に差し替えられます。
〈改正後(2023年4月1日以降)〉
・売上高の向上:売上高が10%以上増加
この点について、改正前の現行制度においては、「生産性向上または新需要の開拓」の要件として、以下のいずれかが見込まれることが要求されています。
〈改正前(2023年3月31日まで)〉
・生産性向上:総資産利益率(ROA)が2014年~2018年の平均より+1.5%ポイント以上向上
・新需要の開拓:売上高伸び率が過去5年度の業種売上高伸び率より+5%以上向上
このように、従来は「総資産利益率(ROA)」や「業種売上高伸び率」といった基準をもとに要件が設けられていました。しかし、わかりにくい上、企業によっては高いハードルになってしまう可能性がありました。
そこで、あくまでも、「自社の従来の売上高と比べて」10%増加したかどうかという、明確かつ簡素な基準へと改められることになりました。
◆【X要件4】財務の健全性
「財務の健全性」とは、計画の終了年度において以下の2つの数値の達成が見込まれることです。
・有利子負債/CF≦10
・経常収入>経常支出
【X要件5】海外売上高に関する要件(※改正による差し替えがあった要件)
最後に、海外売上高に関する要件です。従来の「前向きな取り組み」の要件が撤廃され、その代わりに新設されることになったものです。
〈改正後の要件(2023年4月1日以降)〉
・対象となる事業の海外売上高の比率が一定割合以上となること
この点について、改正前の現行制度においては、「積極的な取り組み」として、以下(1)~(3)のいずれかの類型に応じ、それぞれの指標が設けられています。
〈改正前の要件(2023年3月31日まで)〉
(1)新商品、新サービスの生産・提供⇒投資額に対する新商品等の収益の割合が10倍以上
(2)商品の新生産方式の導入・設備の能率の向上⇒商品等1単位当たりの製造原価等を8.8%以上削減
(3)商品の新販売方式の導入・サービスの新提供方式の導入⇒商品等1単位当たりの販売費等を8.8%以上削減
この従来の要件が撤廃される代わりに、海外売上高の比率が要件とされるということです。
従来の要件が撤廃される理由は、「【X要件3】一定以上の生産性向上等の効果が見込まれること】」の判断と重なる部分があり、かつ、その生産性向上要件が簡略化されることとの平仄を合わせるためと考えられます。
新設される「海外売上高の比率」の要件の内容はまだ明らかになっていません。しかし、その内容によっては、従来よりも利用しにくくなる企業が発生する可能性があります。どのような内容のものになるか注目されます。