「座っているだけ」に見えても、からだは動いている
私たちのからだは、常に働き続けています。たとえ人が「立っているだけ」に見えたとし
ても、私たちのからだは休止しているわけではありません。全身の筋肉や神経、脳など、からだのあらゆる箇所は運動を続けています。
また、人が「座っているだけ」に見えたとしても、からだは一生懸命にそれぞれの働きを休むことなく続けています。
つまり、私たちが起きている間、からだには常に「勢い」があるといえます。「勢い」というと「走っている」「跳ねている」などの動的なイメージがつきまとうかもしれません。
けれども本当は、「立っているだけ」の姿勢であっても、からだはさまざまな働きをしていることになります。重力にさからってまで立ち続けるということには、本来膨大なエネルギーがかかっているものなのです。
「姿勢」という言葉が生まれた背景には、「静かに見える姿にも、勢いが秘められている」ことに、昔の人は気づいていたのかもしれません。もちろん、ひとくちに「姿勢」といっても「正しい姿勢」と「悪い姿勢」があります。
からだの力を適切に抜く「正しい姿勢」の取り方
・「正しい姿勢」……人のからだのつくりや構造にかなっている姿勢です。からだが本来
備えている力を、うまく発揮しやすい姿勢です。
正しい姿勢をしていると、まずからだ全体のバランスが整います。また、必要以上の負荷をからだにかけることがありません。無駄に力を入れたり、緊張したりといったことがなくなります。
・「悪い姿勢」……人のからだのつくりや構造にかなっていない姿勢です。どこかにゆが
みや偏りがあったりして、不安定な状態です。からだが本来備えている力を十分に発揮することができません。また呼吸が浅くなりがちで、その結果血流まで悪くなり、全体的に不健康になりがちです。
このように、悪い姿勢ではなく正しい姿勢をとることこそ、正しい呼吸への第一歩となります。前にも「三調」という概念をご紹介しましたが、「調身」してからでないと、よりよい「調息」はできないものなのです。
「正しい姿勢」について考えたとき、重要なのは「からだの力を適切に抜く」ことです。本来、力を抜かなければいけない部位であるのに、緊張がなかなかとれない場合、心身に負担がかかり、症状となって出てくることがあります。たとえばストレス性の心身症などです。
「からだの力を適切に抜く」には、よい方法があります。それは日常の中で、下半身(下腹、内もも、両足の親指)に力を入れて、上半身(首、肩、胸)の力を抜くよう習慣づけることです。平たくいうと「下半身に力を込めて、上半身は力を抜く」ということを折に触れて行うようにするのです。
【図表】 よい姿勢と悪い姿勢