オーナーと企画者のエゴが「無個性な部屋」を生む?
大切なのは、「いかに入居者に選ばれるか」という視点を持つことです。入居者に選ばれるためには、ライバル物件との「差別化」が必要となります。
空室対策の企画には二つの考え方があります。一つは「万人受けする物件(部屋)」をつくるという考え方、もう一つは「他にはない物件(部屋)」をつくるという考え方です。
「万人受けする物件(部屋)」の場合安定感はあるため、オーナーも納得されるでしょう。仮に空室が続いたとしても、そのリフォームを企画した業者は怒られることはないはずです。
しかしデメリットとしては、どこにでもある部屋なので立地や値段(家賃)、築年数の勝負になってしまう点です。さらに築年数が進むにつれてライバルも多くなります。新築の供給もあるため、空室対策のリフォーム提案において誰もが失敗したくありませんので、「安定感のある部屋」をつくります。そうなると必然的に「同じ部屋」が市場にあふれていきます。
これは、オーナーの「少しでも安く、万人受けする部屋をつくりたい」というエゴと、物件(部屋)の企画者の「失敗したくない」というエゴが生み出した結果であり、そこに住む人の生活(人生)はまったく考慮されていません。
分譲マンションを例にしてもわかるはずです。どの分譲マンションを見ても、たいがいは同じ間取りやデザインになっています。売れなかったら誰かが責任をとる必要があるため、当然といえば当然です。
一方、「他にはない物件(部屋)」の場合、「他物件にはないもの」や「ほかとは違うもの」が必要です。ただし、何らかの特徴がある分、何らかのリスクも発生します。そして失敗したら、「だから言ったでしょ」と追及されてしまいます。
明確な特徴は、それ自体が「売り」になる
しかし賃貸マンション経営は商売であるという点を思い出してください。失敗を恐れるあまりチャレンジしなければ、成功体験を積み上げることも利益を上げることもできません。
とくに事例がないこと、変化が伴うことには不安がつきものですが、市場を調査して「他にはない特徴」を見つけることによってリスクは軽減できます。
さらに特徴がはっきりしていれば、物件(部屋)自身が営業してくれます。「○○な部屋」「△△ができる物件」「□□が無料な部屋」「長期入居すると◇◇がもらえる」といったように、キャッチフレーズをつけることができればそれが「売り」となります。
仲介会社の営業マンも物件の「売り」が明確なら営業しやすいですし、ネットでも「売り」が明確ならお客さんに見つけてもらいやすくなります。そうした特徴のある物件は価値が高まり、将来の家賃下落のリスクや、集客力の維持にもつながるでしょう。