(※写真はイメージです/PIXTA)

相続発生時に相続人の方々が頭を痛める問題に、健康保険証の扱いがあります。加入者が亡くなれば返却しなければなりませんが、健康保険の種類によって返却先や返却方法が異なるため、注意が必要です。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

相続時の「健康保険の資格喪失」のための手続き

生徒:先生、亡くなった方の保険証はどうしたらいいのでしょう?

 

先生:亡くなった方の保険証は返却しなければいけません。亡くなった方が世帯主だった場合は、家族の保険証も返却します。同時に、健康保険の資格喪失の手続きが必要となります。

 

生徒:保険証は返却するんですね。健康保険の資格喪失はどのように手続きをおこなえばよいでしょうか。

 

先生:健康保険は、「国民健康保険」「社会保険」「後期高齢者医療保険制度」の3つがあります。それぞれ資格喪失の手続きが違うんですよ。

 

生徒:具体的に何が違うのでしょう?

 

先生:「誰が手続きをおこなうか」「どこで手続きをおこなうか」「期限はいつまでか」が違います。まずはこれらの手続きについて、順番に説明しますね。

 

◆国民健康保険の資格喪失手続き

国民健康保険は、自営業や正規雇用ではない方が加入している保険です。資格喪失の手続きは死亡した日から14日以内に役場でおこないます。亡くなった方が世帯主だった場合、その家族も資格を失います。

 

保険証がなくなった家族は、世帯主を変更のうえ、新しい保険証を発行してもらう必要があります。

 

◆社会保険の資格喪失手続き

社会保険は会社勤めをされている方が加入している保険です。手続きは亡くなった方が勤めていた会社がおこないます。

 

亡くなったという連絡を受けた会社は、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届と厚生年金保険70歳以上被用者不該当届を提出します。こちらの手続きは5日以内におこなう必要があるので、亡くなったことがわかったときには、すぐに会社に連絡をしましょう。

 

健康保険証は翌日から使用できなくなります。扶養されていた人は、新たに加入の手続きをおこなう必要があります。

 

後期高齢者医療制度の資格喪失手続き

後期高齢者医療制度は、65歳から74歳の障害認定を受けている人や75歳以上の方が加入している健康保険です。資格喪失の手続きは死亡した日から14日以内に役場でおこないます。

 

そのとき、死亡を証明する書類が必要になります。保険証も返却します。

 

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相続時の「健康保険資格喪失届」の書き方

生徒:実際の手続きで提出する「健康保険資格喪失届」の書き方を教えてください。

 

先生:健康保険資格喪失届には、専用の書類があります。そこに、以下の8つの項目を記入します。

 

①被保険者整理番号

②氏名

③生年月日

④個人番号

⑤喪失年月日

⑥喪失原因

⑦備考

⑧70歳不該当

 

平成30年3月からは、マイナンバーを記入することになっていますが、わからないときは、基礎年金番号で書くことも可能ですよ。

 

生徒:「70歳不該当」ってなんのことですか?

 

先生:在職中に70歳になった場合は、別の用紙へ記入するんです。記入用紙が別になるので、注意してくださいね。

 

生徒:健康保険の資格喪失について、ほかにも知っておいた方がいいことはありますか?

 

先生:そうですね、健康保険の協会から支給される費用についてでしょうか。

 

生徒:健康保険の協会からお金が出るということですか?

 

先生:そうです。具体的には「葬祭費」「埋葬料」「埋葬費」「高額療養費」の4つです。

 

生徒:「葬祭費」「埋葬料」「埋葬費」は、葬儀に関係する費用ですね。

 

先生:その通りです。どれも葬儀にかかった費用ですね。国民健康保険では「葬祭費」と呼ばれていて、会社員の方の健康保険では「埋葬料」「埋葬費」と呼ばれています。

 

生徒:加入する健康保険の違いで、費用の呼び方が違ってくるのですね。埋葬料と埋葬費の違いはなんですか? 同じもののように感じますが…。

 

先生:埋葬料は「保険の加入者の家族が埋葬をおこなう場合に支給されるお金」です。埋葬費は「保険の加入者に家族がいない場合、埋葬をおこなった方に支払われるお金」のことです。

 

生徒:家族が埋葬をおこなうかどうかによって呼び方が違ってくるのですね。最後の「高額療養費」とはなんでしょうか?

 

先生:医療費が一定の金額を超えた場合に、健康保険の協会から払い戻される費用です。申請するには、亡くなった方との関係がわかるものを用意しておかなければなりません。また、保険対象外の治療については支給してもらえないので注意が必要です。

 

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資格喪失したら、健康保険証は「返却」するのが原則

生徒:資格喪失したあと、健康保険証は返却しなければならないのですよね。

 

先生:健康保険に加入している人が亡くなった場合は、翌日から健康保険の資格がなくなります。この場合、保険証を役場に返却しなければいけません。

 

生徒:家族の保険証も返却ですよね?

 

先生:保険は世帯ごとの加入になっていますから、家族も同様に保険証を返却します。一方、資格喪失届については、役場によって提出しなくてもよいケースがあります。この点は、役場に直接聞いてみなければなりません。

「健康保険資格喪失届」はどこに提出すればいいの?

生徒:「健康保険資格喪失届」の提出先について、改めて教えてください。

 

先生:会社勤め以外の人は、基本的に役場へ提出すると考えてよいでしょう。会社に勤めている人は勤務先が対応してくれますので、指示に従えば問題ありません。

 

生徒:健康保険資格喪失届を提出する際に必要なものはありますか?

 

先生:それぞれ返却するものがあります。「介護保険被保険者証」「国民健康保険証」「後期高齢者医療被保険者証」の3つです。勤務先には保険証を提出します。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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