【実話】78歳、夫は先立ち、一人孤独に終活する老女「息子夫婦には手伝ってもらえない…」。家族がとった“意外な行動”とは

【実話】78歳、夫は先立ち、一人孤独に終活する老女「息子夫婦には手伝ってもらえない…」。家族がとった“意外な行動”とは
(画像はイメージです/PIXTA)

予期せぬ別れに直面したとき、人は何を思い、どう乗り越えるのか。書籍『もう会えないとわかっていたなら』(扶桑社)では、遺品整理会社、行政書士、相続診断士、税理士など、現場の第一線で活躍する専門家たちから、実際に大切な家族を失った人の印象深いエピソードを集め、「円満な相続」を迎えるために何ができるのかについて紹介されています。本連載では、その中から特に印象的な話を一部抜粋してご紹介します。

撮影当日

その後、翔太に確認してもらったところ、二日前になっても、信子さんは家族に撮影の話をしていないようでした。撮影当日。信子さんは一人で僕を出迎えてくれました。

 

「結局、お一人での撮影になりますか?」

 

「私が勝手にやりたいって思ったことに、みんなを巻き込むのが申し訳なくてね」

 

すると、そこに女性の声が響きました。

 

「なに言ってんのよ、おばあちゃん!」

 

翔太が、信子さんの息子さんと孫娘の一人を連れてきてくれたのです。

 

「さすがに全員は揃えられなかったけど、一人よりはマシでしょ」

 

息子さんは、信子さんの肩を軽く小突いて笑いました。

 

「水臭いじゃないか。こんなおもしろそうなことなら、一緒にやらせてくれよ」

 

そして始まった撮影では、信子さんの両親の話から、赤ん坊の頃の話、そして成長し、子どもや孫たちに恵まれるまで、信子さんの輝かしい人生が語られました。伝える相手がいるからでしょう。

 

信子さんはきらきらした笑顔で身振り手振りを交えながら話してくれます。家族たちも一緒に楽しく話し、初めて聞く話に驚き、興奮していました。僕はカメラを覗き込みながら、そんな瞬間を撮影できる喜びを感じました。

 

「こんなに話すなんて思わなかったわ」

 

僕が片付けをしていると、信子さんがふと漏らしました。息子さんも笑顔で続けます。

 

「初めて聞いた話ばかりですごく楽しかったよ」

 

「本当に。これでもう思い残すこともないわ」

 

「なに言ってんだよ。まだまだ元気でいてくれないと困るよ」

 

息子さんの言葉に、信子さんはその日一番の笑顔を見せてくれました。

 

株式会社サステナブルスタイル

後藤 光

本連載は、2022年8月10日発売の書籍『もう会えないとわかっていたなら』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございます。あらかじめご了承ください。

もう会えないとわかっていたなら

もう会えないとわかっていたなら

家族の笑顔を支える会

扶桑社

もしも明日、あなたの大切な人が死んでしまうとしたら──「父親が家族に秘密で残してくれた預金通帳」、「亡くなった義母と交流を図ろうとした全盲の未亡人」、「家族を失った花屋のご主人に寄り添う町の人々」等…感動したり…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録