(画像はイメージです/PIXTA)

予期せぬ別れに直面したとき、人は何を思い、どう乗り越えるのか。書籍『もう会えないとわかっていたなら』(扶桑社)では、遺品整理会社、行政書士、相続診断士、税理士など、現場の第一線で活躍する専門家たちから、実際に大切な家族を失った人の印象深いエピソードを集め、「円満な相続」を迎えるために何ができるのかについて紹介されています。本連載では、その中から特に印象的な話を一部抜粋してご紹介します。

 

遺品整理を拒む理由

この話は、僕が遺品整理をしているからこそ出会えたものでした。

 

愛さんが僕のところに相談にやってきたのは四年ほど前のことです。お父さんが亡くなって三年が過ぎたというのに、お母さんがいっこうに遺品の整理をしようとしないというのです。

 

愛さんは、一人暮らしになったお母さんが心配で、自分たちが暮らす家への同居の準備を進めているので、遺品の整理を進めたいと考えていたのです。

 

愛さんは、これまでの経緯を僕に話してくれました。愛さんはご両親と二人のお姉さんという五人家族で育ちました。二人の姉は大阪と鳥取に嫁ぎ、愛さんも結婚し、実家のそばに暮らすようになったのです。

 

愛さんたち姉妹に子どもが産まれた頃から、お母さんは「お金で子どもたちに迷惑はかけたくない」「老後のためにも無駄遣いはしない」「慎ましい老後生活で十分」というのが口癖になったといいます。

 

お父さんはゴルフや旅行が趣味で、会社の同僚たちとしばしば出かけていたのですが、お母さんの口癖のこともあり、定年を機にピタリとその趣味を辞め、どこへも出かけなくなりました。

 

そんな矢先、お父さんが急死したのです。お母さんはとてもショックを受けていて、遺品整理も後回しになったといいます。

 

一周忌のとき、愛さんは集まった姉たちとお母さんに遺品整理を勧めたのですが、お母さんは「嫌だ」と言い張ったのだそうです。

 

そのときは、「まだ心の傷が癒えていないのかもしれない」と思い、『お父さんが亡くなって三年が経ったら整理する』という約束をしてそのままにしておきました。そして、三年が過ぎたのです。

 

ところが、今度もまたお母さんは遺品整理を拒んだのです。愛さんは「約束が違う」といって、遺品整理を強行しようとしました。

 

すると、お母さんがお父さんの書斎から文箱を持ってきて、手紙の束を出したのです。それは、お父さんの退職後に会社の同僚たちから届いた手紙でした。どれもゴルフや旅行、飲み会へのお誘いです。

 

「お父さん、こんな誘いが来てるなんて、ひと言も言ってくれなかったのよ。お母さんが、いろいろ言ったせいで、お父さんに我慢させてたのよ。これを見たら、お父さんは幸せだったのかなって思っちゃってね。こんなにたくさんの人に慕われていたのに、私のせいで……」

 

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本連載は、2022年8月10日発売の書籍『もう会えないとわかっていたなら』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございます。あらかじめご了承ください。

もう会えないとわかっていたなら

もう会えないとわかっていたなら

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扶桑社

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