【実話】78歳、夫は先立ち、一人孤独に終活する老女「息子夫婦には手伝ってもらえない…」。家族がとった“意外な行動”とは

【実話】78歳、夫は先立ち、一人孤独に終活する老女「息子夫婦には手伝ってもらえない…」。家族がとった“意外な行動”とは
(画像はイメージです/PIXTA)

予期せぬ別れに直面したとき、人は何を思い、どう乗り越えるのか。書籍『もう会えないとわかっていたなら』(扶桑社)では、遺品整理会社、行政書士、相続診断士、税理士など、現場の第一線で活躍する専門家たちから、実際に大切な家族を失った人の印象深いエピソードを集め、「円満な相続」を迎えるために何ができるのかについて紹介されています。本連載では、その中から特に印象的な話を一部抜粋してご紹介します。

映像作品の撮影依頼

昔の写真を見て、思い出話をしてもらう。簡単に言ってしまえば、それが僕の仕事です。自分の人生を振り返る二〇枚の写真を選んでもらい、その写真について説明している様子を動画で撮影して、それを編集し、一本の映像作品とするのです。

 

思い出の写真ですから、そこで語られるのは楽しい話ばかりです。もし、その方が亡くなっても残されるのは思い出の写真と、楽しく人生を振り返る姿だけ。そのため、その映像を見る人たちが流す涙もとても温かいものとなるのです。

 

これは、そんな映像作品の撮影依頼をしてきた、一人のおばあさんのお話です。

 

藤崎信子さん。それがおばあさんの名前です。信子さんは終戦の年に生まれました。信子さんは、孫の翔太くんからこのサービスの話を聞いて、僕のところにやってきたのです。翔太と僕とは学生時代からの友人です。

 

「家にある写真を処分する前にお願いしようかと思って」

 

一人でやってきた信子さんはそう言いました。終活として、自分の写真を処分する人は少なくありません。残された家族に故人の写真を処分させる負担をかけたくないのです。

おばあさんの表情が曇った一言

「ここで、すべてデータ化できますよ。写真を選びながら、データにして残しましょう」

 

僕はいつもこの提案をします。長い人生の中からたった二〇枚の写真を選ぶために、どのみちたくさんの写真を見なくてはなりませんし、データとして残るなら家族の大きな負担になることもありません。

 

「私のことより、両親と亡くなった夫のことを知ってほしいし、残しておきたいんです」

 

どうしてこのサービスを利用しようと思ったかを尋ねた僕に、信子さんはそう答えました。核家族化が進んで、そういう話を伝え切れていない人が増えているように思います。久しぶりに会い、短い時間を一緒に過ごすだけの祖父母に、そんなことを尋ねる子も孫もなかなかいないのでしょう。

 

「では、この日に伺いますから、ご家族と予定を合わせておいてください」

 

撮影の日時を決めた僕がそう言ったとき、信子さんの表情が曇りました。

 

「家族も一緒なんですか?」

 

家族の思い出話を他人の僕に説明してもらっても、いい映像が残せません。思い出の写真についての説明を家族に向けてするからこそ、共通の話題があったり、初めて聞く話に新たな会話が生まれたり、残される映像も楽しいものになるのです。そう説明しても、信子さんの表情は曇ったままでした。

 

「みんな忙しくしてるし、わざわざ時間をとってもらうのが申し訳ないわ」

 

家族へのサプライズとして考えているなら、そう言うでしょうが、どうやらそういうわけでもないようでした。無理強いするわけにもいきません。

 

「動画の撮影のためということで、ぜひお願いしてみてください」

 

そう伝えるに留めて、あとは信子さんの意思に任せるしかありませんでした。僕はすぐに翔太と連絡をとって、信子さんの家での様子を尋ねました。

 

翔太はいわゆる外孫で、同居をしているわけではないからはっきりしたことはわからないと前置きして、信子さんが家族にとても遠慮していることを話してくれました。

 

信子さんの家族は、息子さん夫婦も孫娘たちも働きに出ており、日中、家にいるのは信子さん一人。朝、慌ただしく出ていく家族を見送って、夜、帰ってくる家族を出迎える毎日なのだといいます。

 

家事もお嫁さんがしっかりとこなしているため、信子さんは自分の時間をすべて自分のために使えます。

 

「ばあちゃん、それを申し訳ないって思ってるみたいでさ」

次ページ撮影当日

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    本連載は、2022年8月10日発売の書籍『もう会えないとわかっていたなら』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございます。あらかじめご了承ください。

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