(1)加害者への返金請求
加害者への返金請求については、国際ロマンス詐欺においては相手が個人情報を残さないことが多いため、かなり難しいのが現状です。加害者の氏名及び連絡先の特定がかなり困難です。
まず、マッチングアプリにおいては、正確な個人情報を入力しなくても登録ができてしまうのが現状です。少なくとも、第三者の情報を用いて、アプリ利用者とやり取りができてしまえるのが現状です。
また、LINEも相手のアカウントの情報は、被害者から確認できません。弁護士会の照会をするとしても、QRコードや相手のユーザー名だけでは不十分です。少なくとも、LINEのIDがなければ、個人情報の開示は難しいです。
運よくLINEのIDが残っていても、厳格な本人確認は行われないこととアカウントの削除とともに個人情報も破棄される仕様のため、情報の開示は失敗に終わることもままあります。
そのため、加害者への返金請求は、基本的に難しいと考えるべきでしょう。
(2)加害者を手伝った人への請求
国際ロマンス詐欺は組織的な犯行であるため、LINEやマッチングアプリの審査のための情報を提供した者が調査で明らかになったり、振込口座がわかっているような場合に、そのような情報提供者に請求をすることがあります。
大抵の場合は、支払い能力のない外国人の個人情報であることが多いのですが、稀に大学生などが関与しており、親との交渉で回収できることがあります。ただ、これもよくあるケースではありません。
(3)アプリ運営会社への請求
国際ロマンス詐欺は、マッチングアプリやLINEの助力がなければ成り立たない、詐欺スキームです。そうである以上、本来的には、詐欺師に詐欺の場を提供しているマッチングアプリやLINEも責任を負うべきというのが自然な考え方かと思います。
当職も、この観点からの請求を試みましたが、裁判所の反応は冷淡なものでしたが、様々な資料を見ていく中で、アプリ側の杜撰な利用者の管理実態も明らかになり、より一層、アプリ側も責任を問われるべきとは思います。
現在、こうした、出会いの場などを提供する事業者の責任をプラットフォーム提供者の責任として、法規制に関する議論が行われているようですが、マッチングアプリの運営会社は様々なところで大口のスポンサーになっていることもあり、実効的な議論はされていないようです。
今後は、アプリ側も不正利用者排除を厳格に行うようにするように、この観点からの規制は強くすべきと思われます。