多くの企業が勘違いしているウェブブランディングの「本質」とは
まず一般的なブランディングのフローについて触れておきます。ブランディングは大まかに4つのフェーズに分かれます。
1つ目は「コンセプトづくり」、2つ目は「CI・ロゴの決定」、3つ目は「アウトプット物の制作」、4つ目は「情報の拡散」です。
「コンセプトづくり」では、誰に何を伝えたいのかについて十分に議論し、理解を深めます。
そして「CI・ロゴの決定」では全体のビジュアルの方向性を決定するCI(コーポレート・アイデンティティ)をしっかり定義しロゴマークをつくり込みます。
その後の「アウトプット物の制作」でパンフレット、チラシ、名刺、ウェブサイトなどを制作し、「情報の拡散」でそれらを配布していくといった具体的な広報活動に入っていきます。
ここで紹介したのはブランディングの流れの一例ではありますが、大切なポイントは、しっかりとコンセプトをつくってからデザインを制作するという順序です。
ところが実際には「パンフレットの情報が古くなったからつくり変えよう」とか「ウェブサイトからの反響がないので、今風なデザインにリニューアルしよう」など、アウトプット物の制作からいきなり始めてしまう企業が非常に多く存在します。
さらに、パンフレットはつき合いのある印刷会社へお願いし、ウェブサイトは知人から紹介された別の会社へ、そういえばロゴマークもないからついでにつくってもらおう、など制作物を都度必要に駆られた時点で別々の会社へオーダーしているということもよくあります。
このようなやり方では企業や商品・サービスの価値を正しく伝えることができないばかりか、パンフレットとウェブサイトのデザインがまったく違うテイストで出来上がってしまう可能性が高く、同じ会社の情報に見えないという事態さえ発生しがちです。
このようなケースがあとを絶たない理由は経営者の「知財」に対する意識の欠如と、決裁のフローにあります。
ブランディングの本質とは制作物を納品することではなく、どのような戦略で、どのような制作物をつくり、どのように市場へ伝えていくのかという「知財」であり、いわば目に見えないものにあります。
ところが多くの企業は最終的な納品物に対して対価を支払うという感覚を拭いきれていません。つまりロゴマーク、ウェブサイト、パンフレットなどの目に見えるもので実物やデータを納品された場合に請求書が通るというような決裁の仕組みに縛られており、その上流工程や途中工程に対価が発生することが理解されていないのです。