(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2022年12月5日に公開したレポートを転載したものです。

2023年最大の不透明要因である中国の政情不安

需給面では近年売り越し基調が続いてきた海外投資家の日本株回帰が期待される。IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(22年10月)によれば、23年も成長率横ばいを保つのは先進国で日本だけだ。世界景気が減速に向かうなか、日本の景気の底堅さは海外投資家の資金を引き付ける要因になるだろう。円安が止まる見通しであることもタイミング的に海外投資家の日本株投資を後押しするだろう。検討されているNISA(少額投資非課税制度)の拡充、継続的な企業の自社株買いも需給面のプラス材料だ。

 

2023年最大の不透明要因としては中国の政情不安が挙げられる。コロナ政策への抗議活動が異例の盛り上がりをみせたが、これが果たして一時的なもので収まるのか、あるいはより大きな民主化、反政府の動きへと発展するか予断を許さない。またそうなった場合、3期目に入った習政権の対応も気がかりである。台湾問題も含めて、2023年は中国の動向がこれまで以上に相場のリスクファクターとして意識されるだろう。

 

ただし、これは悪材料ばかりではなく、グローバル投資家の中国離れを助長し、日本がその受け皿として選択肢になる可能性もある。かつて日本の魅力度が低下し、グローバルマネーが日本を素通りして成長著しい中国に向かったときは「ジャパン・パッシング」と言われた。今度はその巻き戻しが始まるかもしれない。また、最近の報道によれば中国政府は厳格なコロナ政策の見直しを検討しているという。中国がコロナ政策を見直せば世界景気にとっても、無論、日本企業の業績にとってもポジティブである。

 

上振れシナリオとしては相場サイクルが早期に金融相場入りする可能性が挙げられる。FRBが金融緩和に転じるのはまだ当分先と想定しているが、米国景気の先行き次第では23年後半に「予防的緩和」に転じる可能性もあり、その場合は「不景気の株高」の様相が色濃くでるだろう。また、その逆もあり得る。米国景気が粘り腰をみせ、それほど景気が悪化しないというシナリオである。すでにISM製造業景気指数は拡大・縮小の境である50を下回り企業の景況感で測れば米国は不況に突入している。

 

ただし、同指数の50割れは通常の不況では(つまりリーマンショックなどの超ド級の景気後退でなければ)6ヵ月未満に収まるのが過去のパターン。今回、景気減速を招いている要因である利上げが減速・停止に向かえば景気減速そのものも止まってくるだろう。意外に景気の底が浅く、早い底入れ~回復となる可能性も捨てきれない。なにしろ労働市場が堅調で、これは構造変化によるところも大きく、過去の景気後退局面でみられたような失業率の上昇は今回はないかもしれない。

 

そうなると「景気後退」という認定がなされない、ただの「景気減速」で乗り切ってしまうシナリオは充分あり得るだろう。いずれにせよ、景気減速のなか利上げの打ち止め、さらにその先の金融緩和期待で上げる相場になる。いわゆる「不景気の株高」である。

 

23年の有望セクターとしては、FRBの利上げ停止・長期金利の低下をメインシナリオとすれば22年に金利上昇で売られたグロース株の戻りに賭ける戦略に妙味があるだろう。加えて、世界景気減速に対する安全策として内需ディフェンシブ・セクターも有望だ。この両セクターへの投資は分散効果の点からも魅力的だと考える。

 

 

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

 

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