裁判所が譲渡承諾料を「返還不要」と判断したワケ
・本件借地権の譲渡の承諾や本件承諾料の支払に係る部分は、借地人と地主とのあいだで合意されたものであること
・借地人としては、今後、地主に対して本件承諾料の支払をしたとしても、のちに、買受予定者が借地人に対して売買代金の支払を怠るなどして本件売買契約が解除される可能性があることも想定することができ、
そのような場合に支払済みの本件承諾料の返還を求めることができるものとするのであれば、あらかじめ地主とのあいだでその旨を合意するなどの対応を採ることも可能であったこと
・しかるに、借地人と地主とのあいだの合意では、そのような場合の取扱いについての定めは特にもうけられていないこと、したがって、借地人と買受予定者も、本件売買契約が解除されたからといって、当然には本件承諾料の返還を求めることができないものと認識していたことがうかがえることが認められる。
・これらのことに照らせば、借地人と買受予定者とのあいだの本件売買契約が解除されたからといって、ただちに、そのことが、借地人と地主とのあいだの本件承諾料を支払う旨の合意の効力に消長を来すものではないというべきである。
なお、借地権の売買契約が白紙になったのに、譲渡承諾料を地主が保持し続けるのは公平ではない、ということも借地人は主張しましたが、この点については、借地人が売買契約解除の違約金として1,076万円を受け取っていることを理由として、直ちに公平に反しない、と裁判所には判断されています。
この裁判事例を教訓にすると、借地権の譲渡をする場合は、借地人としては、地主への承諾料の支払いについて、その後の借地権譲渡契約の解除の場合も想定して地主と承諾料の支払・返還については合意してしっかりと取り決めをしておく必要があります。
※この記事は、2021年5月5日時点の情報に基づいて書かれています(2022年11月17日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】