不動産業者がせっかく優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。
信託のメリットとデメリット
【事例4】で弁護士が提案した信託の内容は、Aさんの指示に従ってCさんが不動産の管理と処分を行うというものです。具体的には、Aさんが自宅不動産を売却する業務をCさんに託し、そこで得た現金をAさんとBさんの療養費に充てる、そしてAさんもBさんも死亡したときに余っていたらCさんが取得する、という契約をAさんとCさんの間で交わすことでした。
これをやっておくと、改めてAさんの了承がなくてもCさんが不動産の売却を最後まで実行することができるようになります。つまり、Aさんの意思疎通が困難になっても、または死亡しても信託をしておけばカバーできることになるのです。
信託はこのような制度のため、仮にCさんがAさんとBさんを裏切って売却金をCさん自身のために使ったとしても誰にも分からないことになります。
【事例4】の場合、AさんがCさんに対して全幅の信頼をおいていたこともあり、あえて提案しませんでしたが、託す人に不安があるときは第三者の監督人を指定しておくことも可能です。
鈴木 洋平
LTRコンサルティングパートナーズ
理事
LTRコンサルティングパートナーズ
理事
慶應義塾大学卒業後、2004年に弁護士登録。複数の行政機関で成年後見制度に関する委員、建築審査会委員、横浜家庭裁判所家事調停官(非常勤裁判官)など歴任したうえで、現在は住宅品質確保法の紛争処理委員、建設工事紛争審査会委員、横浜地方裁判所等民事調停委員。
「不動産」が関係する法律問題のほか「高齢者」であることに起因する法律問題を重点的に取り扱っている。不動産関係の顧問先は50社以上、相談件数は年間200件を超える。
11の士業が集まるLTRコンサルティングパートナーズの理事として、税理士、司法書士、土地家屋調査士、一級建築士との連携が必須となる複雑な不動産案件の解決実績も多数。
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