(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がせっかく優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

清算型の遺言書を作る場合の注意点

なお、清算型の遺言書を作成するときは、まだ残金が確定していないため、「B法人に残金の3分の1」、「C法人に残金の3分の2」などといった割合で指定しておくことも可能です。

 

また、身寄りのない人のなかには、不動産をそのままの形で寄付したいと希望するケースもあります。しかしながら、相手が行政機関や基金などの場合、不動産をそのままの形で受け取ることはほとんどなく、いったん現金の形にして寄付を受ける段取りをしなくてはなりません。

 

さらに前述のような清算型遺贈を用いる場合は、納税に関する注意も必要です。不動産の相続については、一度法定相続人への相続登記をしたうえで遺言執行者の権限で売却に基づく所有権移転登記をすることになります。

 

すると、法務局から情報提供があった税務署から法定相続人に対して、不動産の譲渡所得税に関するお尋ねが届く可能性があります。このとき遺言執行者が適切に税務処理をしていないと、法定相続人は相続をしていないのに納税だけ求められるような事態になり得るのです。

 

この場合の課税関係についてはいまだに明確な答えがないのですが、参考資料はあります。

 

2021年7月11日の国税庁のホームページに掲載された「換価遺言が行われた場合の課税関係について」によれば、「換価遺言に係る当事者間の権利義務関係に着目すると、遺言の効果が発生すると、遺言執行者に換価財産の管理支配権限が帰属し、所有権と同等の権利を有するとともに、相続人には何ら実質的な権利は存在せず、一方、受遺者には、換価代金を受益する権利が生じる。

 

これらの当事者の権利関係は、信託の場合の当事者(委託者、受託者、受益者)の権利関係に類似している。制度論的には、換価遺言の場合は、信託税制と同様の課税関係にすることが望ましいと考える」となっています。

 

要するに、遺言執行者が譲渡所得税について受遺者の負担となるような運用をしたり、相続をしていない相続人(不動産登記に名前だけが出てしまう相続人)に対して課税負担が及んだりしないように、くれぐれも注意する必要があるということです。

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不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

鈴木 洋平

幻冬舎

相続、担保、借地・借家…… 不動産業者が直面する法律問題は弁護士との「協業」で解決! 不動産取引を成功に導く「協業」のポイントを 8つの成功ストーリーで徹底解説。 不動産業者必読の一冊! 「仕事になりそうな…

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