不動産業者のイメージを活かした「窓口」という役割
ポイント2| 「ハードルの高低」をうまく利用する
「弁護士と話をするのはハードルが高い」と、不動産業者、顧客問わず誰からもよく言われます。「難しい言葉で説明する」「少し相談しただけで費用を支払うことになる」といったイメージがあるからです。
一方で、顧客にとって不動産業者の多くは、弁護士に比べれば相談しやすい相手であるはずです。したがって顧客に対する意思の疎通のしやすさという意味では不動産業者のほうが有利です。ですから、協業を行うに当たってこのハードルの高低を利用しない手はありません。基本的に顧客との窓口は、不動産業者が担ったほうがスムーズに進みます。
ただし、法律に関することは別です。不動産業者のなかには、正しい法律知識や経験をもち、それらに基づく今後の見通しをきちんと説明できる人もいます。しかし、顧客の立場からすれば、そのような法律知識や経験の裏付けは分からないので納得できないかもしれません。それゆえ、たとえ同じ回答になったとしても顧客の納得のためにあえてハードルの高い弁護士から回答することも必要となります。
このように、ハードルの高低は、場面に応じて長所にも短所にもなり得ます。そのことをお互いに理解し、うまく利用するのが協業を成功させる秘訣です。
不動産業者のなかには、あらかじめ法律的な見通しを顧客に話したうえで、あえて弁護士との面談もセッティングし、自身の見通しが正しかったことを裏付けて信頼関係を強化し、不動産の処分や管理の受託につなげる人もいます。
ポイント3| 「情報共有と合意形成を怠らない」
協業を成功させるには、顧客、不動産業者、弁護士の3者がチームであることを全員で意識しつつ情報を共有し、合意形成をしながら問題の解決を図っていくことが必要です。
特に専門知識を用いて業務を遂行する不動産業者と弁護士との間の情報共有は重要です。ありがちな失敗事例としてこういう話があります。
Aさんは建物の所有者で、土地を地主のBさんから借りています。ある日、AさんはBさんへ借地権の買取りを依頼しましたがBさんがそれを拒否したため、ある不動産業者に相談したところ借地権を買い取ってくれるというCさんを紹介してくれました。
しかし、Bさんはその譲渡も承諾してくれません。そこでAさんは弁護士に相談したところ、その弁護士の働きによってAさんはBさんの承諾に代わる許可(借地非訟制度)を裁判所から得ることができました。これでCさんへ借地権を売却できます。
しかし、ここで問題が発生します。Cさんは当初、ローンを利用して資金を調達しようと考えていましたが、地主が売却を承諾していない物件に対して融資をする金融機関は基本的にありません。結局、Cさんは友人、知人からお金を借りて現金で支払うことになりました。さらに今後Cさんがこの借地権を売却するときも、同様に融資を利用せずに買える人を探さなければならなくなります。
この場合、不動産業者は地主の承諾がなければ融資を受けられないことを知っていたはずです。それなのに弁護士へ伝えていなかったという失敗事例です。