(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がいかに優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

情報共有における注意点

顧客に関する情報共有については、個人情報保護の観点から顧客の同意が必要になります。しかしながら、場合によっては不動産業者から弁護士に、または逆方向に話してほしくないと言われる情報もあります。例えば私は顧客から「この問題が解決したら一般媒介契約にするつもりだけど不動産業者には言わないでほしい」と頼まれたことがあります。

 

そのような情報の有無を確認し、あれば例外的に共有しないように配慮することも重要です。

 

また、すべての情報共有を拒否する顧客もいないわけではありません。このような場合は、顧客に対して情報共有の必要性を丁寧に説明し、粘り強く同意を求める必要があります。

 

ポイント4| 「お互いを顧客としない」

私が重要視している協業における基本的な考えに「お互いを顧客としない」というものがあります。よほど人間関係が出来上がっていない限り、協業相手に自分の商品やサービスを販売することは協業の妨げになります。

 

お互いが仕事の発注者と受注者という関係になってしまうと、やがて相手から仕事が得られないことが不満となり、ぎくしゃくとした関係になるからです。これはお互いが自分の利害を優先する交渉相手になってしまうので、やむを得ない構図だと思います。

 

ですから、円満な協業を続けたいなら、あくまでも両者が共通の顧客の利益を追求するべきです。共通の顧客に対して同じ目的をもつことで、スムーズに協力体制を築くことができます。

 

また、そのような協力体制を続けていけば、普段は見ることができない仕事人としての姿、たとえば仕事のやり方、顧客に対する対応、本音と建前の使い分け、スピード感などが垣間見えるようになり、さらなる信頼関係の強化にもつながります。

 

私の経験上、優れた仕事人としての姿を見ることができた場合は、改めて別の不動産取引の協力をお願いしたいと思うこともあります。

 

具体的には、擁壁に関する問題、残置物の処理、隣人への対応など得意分野を把握できれば、それに応じてより依頼がしやすくなります。

 

ポイント5| 「お互いの分野の最低限の知識を身につける」

「餅は餅屋」なので、不動産の専門家が法律のことをしゃかりきになって勉強する必要はまったくありません。

 

しかし、打ち合わせの際にお互いの言っていることがよく理解できないのは困りますし、新規案件を発見してくるうえでもお互いの分野の最低限の知識を身につけておかなければ、声をかけるきっかけにすらなりません。ある程度の知識があれば、新規開拓をしている際に「この顧客の問題に関しては弁護士に相談すればなんとかなりそうだ」と勘を働かせることができるからです。

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不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

鈴木 洋平

幻冬舎

相続、担保、借地・借家…… 不動産業者が直面する法律問題は弁護士との「協業」で解決! 不動産取引を成功に導く「協業」のポイントを 8つの成功ストーリーで徹底解説。 不動産業者必読の一冊! 「仕事になりそうな…

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