ニトリのBS(貸借対照表)を例に
ニトリのBSを見てみましょう[図表3]。細かい数字がたくさん並んでいますが、PLを上から一行ずつ読むのではないように、BSも上から一行ずつ読むのではありません。
まずは、3つの区分で大きく捉えましょう。「資産合計」、つまり、総資産を見ると、9,270億円です。「負債純資産合計」も9,270億円。左右が同じ金額になっています。負債は2452億円、純資産は6818億円です。資産=負債+純資産になっているのがわかります。
「ゲーム業界にあるのは天国と地獄だけ。中間はない」
任天堂は、業績の変動がとても大きい会社です。ヒット商品があれば業績は大きく伸びます。ゲーム機やゲームソフトは、開発するのにお金がかかります。開発にかかったお金は、開発した期の費用として計上されます。発売前に、費用がかかってしまうのです。
そして、発売されたあとは、材料費はあまりかかりませんから、粗利率は高くすることができます。ヒット商品になると、売れれば売れるだけ儲かりやすいのです。
ただ、ヒット商品を出してもお客さんは飽きてしまうので、売れるのも長続きしません。任天堂のゲーム機は、発売から数年でピークとなり、その後減っていく場合が多く、そこで新商品を出すことが繰り返されています。
過去最高の売上高を計上したのは2009年3月期。Wiiが大ヒットして、売上高1兆8,000億円、純利益2,800億円となりました。その後業績は下降し、2012年3月期には赤字となります。
2012年発売のWiiUの売れ行きは伸びず、2017年3月期の売上高は5,000億円を下回りました。スマホゲームにお客さんを奪われてしまったのです。業績が低迷しても研究開発費は減らしませんでした。
2017年に携帯型ゲーム機としても据え置き型ゲーム機としても遊べるニンテンドースイッチを発売して、息を吹き返します。2021年3月期は「あつまれどうぶつの森」が大ヒット。コロナ禍による巣ごもり需要もあり、売上高は1兆8,000億円、純利益は過去最高の4,800億円となりました。
任天堂の3代目社長 山内溥氏は、「この業界にあるのは天国と地獄だけ。中間はない」と言っていたそうです。
業績の変動が大きいということは、リスクに備える必要性が高く、自己資本比率を高くする必要があります。2021年3月末の自己資本比率は76.6%と高い水準になっています。
前田 忠志
公認会計士