(※画像はイメージです/PIXTA)

「社会人のたしなみとして決算書を読めるようになりたい」と思っていても「実際には難しい」という声をよく耳にします。しかし、専門家を目指しているわけではないビジネスパーソンに必要なのは、会社が「儲かっているか」「つぶれないか」というシンプルな2つの要点を、決算書から読み取れるようになることです。銀行員、コンサルタント、M&Aアドバイザーと「決算書を読む」仕事に約30年携わってきた前田忠志氏が、わかりやすく紹介します。

本が売れない時代に、なぜ多くの新刊が出るのか?

出版不況といわれて久しく、本の販売額は20年以上減り続けています。ピークの1996年には1兆円以上もの書籍が売れていたのですが、2020年には7,000億円を下回っています。本好きの私としては寂しい限りですが、一方で、毎年、約7万点もの本が新たに出版されています。7万点というと、1日あたり200点にもなります。

 

全体の販売額が減っているのであれば、新刊点数も減りそうなものですが、新刊点数は20年前とくらべても減っていません。

 

減っているのは、新刊1点当たりの販売額です。書店の店頭には、昔も今も、多くの新刊が並んでいます。

 

本以外のほとんどの商品は売れ残ると値引きされますが、本には値引きがありません。本は、売れ残ると、値引きされずに出版社に返品されます。

 

この仕組みのおかげで、出版社は自分の決めた定価でさまざまな本を出すことができ、書店は安心して定価販売ができ、私たちは誰もが同じようにさまざまな本を手にすることができます。

 

書店は、新刊と入れ替えるときにも返品します。新刊点数が多いこともあり、多くの本は、店頭に並ぶ期間があまり長くありません。本の返品率は、なんと30%以上にもなります。

 

[図表1]

 

出版社は、返品されてしまうので、新刊を出します。新刊を出せば、また書店に並びます。新刊1点当たりの販売額が減っているなか、新刊を出すことで売上を作っている面があるのです。

 

出版社は、本を、取次といわれる問屋に卸します。卸した時点ではまだ返品の可能性がありますが、売上代金が入金されるケースもあります。この場合は、新刊を出せば、すぐに現金を手にすることができます。

 

出版社の経営には、社員への給料、印刷代、著者への印税など、お金がかかります。なかには、手元の現金が足りない場合に、新刊を出すことで現金を手にして、支払にあてる出版社もあるといわれています。他の業界では経営の苦しい会社は新商品を出せないことも多いのですが、出版社の場合は、経営の苦しい会社が新刊を次々と出すこともあります。

 

資金繰りは会社経営を左右します。黒字でも現金がなくなれば倒産しますし、赤字でも現金があれば倒産しません。会社経営では、現金が重要なのです

お金の流れはキャッシュ・フロー計算書でわかる

会社経営では現金が重要ですが、会社の経営状況を知るうえで重要な2種類の決算書BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)では、現金の動きはわかりません。現金の動きをあらわす決算書がキャッシュ・フロー計算書です。

 

キャッシュフローを日本語に訳すと現金の流れ。日本では2000年3月期から導入された比較的新しい決算書です。英語ではCash Flow Statement。貸借対照表はBS、損益計算書はPLというのは定着していますが、キャッシュ・フロー計算書は、CF、CFS、CSなど人によって略称が違います。ここではCFと略して記載することにします。

 

BS、PL、CFの3つを財務3表といいます。CFは、BS、PLを補完する位置づけとして重視されています。CFは、上場企業は必ず作っています。ただ、未上場企業はCFを作る義務がなく、ほとんどの会社は作っていません。

次ページニトリのキャッシュ・フロー計算書の例

※ 本連載は、前田 忠志氏の著書『「会社の数字 」がみるみるわかる!決算書のトリセツ』(教育出版)から一部を抜粋し、再構成したものです

「会社の数字」がみるみるわかる!決算書のトリセツ

「会社の数字」がみるみるわかる!決算書のトリセツ

前田 忠志

実務教育出版

「決算書を読めるようになるのは、実は、結構簡単です。英語、IT、会計がビジネスパーソンの3大スキルなんて言われていますけれど、コスパが高いのは、会計です。」 決算書の読み方に関する本は数多くありますが、途中で挫折…

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