(※写真はイメージです/PIXTA)

「社会人のたしなみとして決算書を読めるようになりたい」と思っていても「実際には難しい」という声をよく耳にします。しかし、専門家を目指しているわけではないビジネスパーソンに必要なのは、会社が「儲かっているか」「つぶれないか」というシンプルな2つの要点を、決算書から読み取れるようになることです。銀行員、コンサルタント、M&Aアドバイザーと「決算書を読む」仕事に約30年携わってきた前田忠志氏が、わかりやすく紹介します。

実質的な財産の状況が可視化できる、貸借対照表

経済力がある人というと、どういう人でしょうか? 経済力=年収だと思う人もいるでしょう。でも、年収だけで経済力が図れるかというと、そうでもありません。

 

どれだけ貯金があるかというのも、経済力と関係があります。同じ年収なら、貯金が多い人のほうが経済力は高いといえるでしょう。いや、貯金だけでなく、車や家なども持っているほうが、経済力があるといえそうです。

 

一方で、車や家を持っていても、ローンを払い終えている人と、ローンが残っている人では、違ってきます。財産については貯金・車・家のようなプラスのものとローンのようなマイナスのものがあることがわかります。

 

タロウ君は、50万円の預金があり、100万円の自動車をもっていて、ローンが70万円残っているとすると、[図表1]のようにするとわかりやすくなります。預金と自動車はプラス。借入金はマイナス。プラスからマイナスを差し引くと、差額が正味の財産になります。

 

[図表1]

 

このような考え方で作られるのが貸借対照表です。貸借対照表は、財産の状況をあらわした決算書です。英語ではBalance Sheetで、略してBSと呼ばれることが多いです。

 

一方、会社にはさまざまな収益、費用があります。それを分類して並べたのが損益計算書です。損益計算書は、会社の経営成績をあらわしている決算書です。損益計算書は、英語ではProfit and Loss Statementですので、略して、PLと呼ばれることが多いです。

 

会社の決算書では、BSとPLの2つが重要な決算書です。

PL(損益計算書)はフロー、BS(貸借対照表)はストック

PLとBSには、フローとストックという違いがあります。PLはフローで、BSはストックです。お風呂でイメージするとわかりやすいかもしれません。一定期間にお風呂に入ってくるお湯の量がフローでPL、一時点においてお風呂にたまっているお湯の量がストックでBSです。

 

個人でいうと、年収がフローで、貯金がストック。年収だけで経済力をはかれないように、会社の数字を見るときも、フローとストックの両方を見ることが必要です。

 

[図表2]

 

フローは期間の数字で、ストックは時点の数字です。PLには、「2020年2月21日〜2021年2月20日」というように、期間が書いてあります。BSには、「2021年2月20日現在」というように、いつの時点のものなのか、日付が書いてあります。

 

ストックにはプラスのものとマイナスのものがあるので、BSは左右にわかれた表になっており、大きく3つの区分があります。BSの左側は、「資産」。現金とか自動車のようなプラスの価値がある財産です。

 

BSの右側は上下にわかれます。右側の上が「負債」。ローンのようなマイナスのもの、つまり誰かに返さなくてはならないもの、支払わなくてはならないものです。右側の下は「純資産」。資産から負債を引いたのを純資産といいます。純資産は、誰にも返済する必要のない正味財産です。

 

純資産=資産−負債

 

この式は、常に成り立ちます。とても重要な式なので、覚えてしまってください。PLで重要な式は、「利益=収益−費用」です。

 

「利益=収益−費用」

 

BSで重要な式は、「純資産=資産−負債」です。資産と純資産は「純」の一文字の違いだけですが、意味は全然違います。

 

会計で「純」というと差引後という意味です。純利益も「純」ですが、すべての費用を差し引いた利益ということですね。「純資産=資産−負債」ということは、資産=負債+純資産になります。BSの左が資産で、右が負債+純資産だから、BSの左の合計と右の合計は必ず同じになります。

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※ 本連載は、前田忠志氏の著書『「会社の数字」がみるみるわかる! 決算書のトリセツ』(実務教育出版)から一部を抜粋し、再構成したものです

「会社の数字」がみるみるわかる!決算書のトリセツ

「会社の数字」がみるみるわかる!決算書のトリセツ

前田 忠志

実務教育出版

「決算書を読めるようになるのは、実は、結構簡単です。英語、IT、会計がビジネスパーソンの3大スキルなんて言われていますけれど、コスパが高いのは、会計です。」 決算書の読み方に関する本は数多くありますが、途中で挫折…

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