親が陥りがちな「確証バイアス」
そもそも親は「確証バイアス」によって、子育ての方針を修正するのが難しくなります。「確証バイアス」とは心理学の用語で、自分に都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまうことを言います。自分が正しいと思うことを支持する情報に目が行き、否定するような情報は無視する。その結果、思い込みが強固になり、かたよった判断をするようになるというものです。
これは子育ての方針に限らず、あらゆる情報について起こることです。普通にしていると誰もが陥りやすいものですから、バランスのとれた考え方をするためには、意識して自分とは別の考え方を知る努力が必要になります。
ただ、子育てに関してはとくに確証バイアスが働きがちになります。子育てや家族の中のことは、まわりが口出ししにくいからです。
「お子さんの話をもうちょっと聞いてあげたらいいんじゃない?」などと周囲の人が思ったとしても、口に出せば「余計なお世話」と言われるでしょう。「うちにはうちの方針があるから」と言われたら、何も言えません。虐待などよほどのことがない限り、外からの介入が難しいのです。虐待にしても、「これはしつけだ」と言い張られたら、簡単に介入できるものでもありません。
こうして、家族というある意味閉鎖的な空間の中で「うちの子にはこれがいい」と確信を持ってしまうと、他の情報が入ってこなくなります。
すると、どうなるか。子どもの発するSOSにも気づかなくなります。
子どもは、「もっと自分を見てほしい」「認めてほしい」というときもそれをストレートに伝えることはなかなかできません。ちょっとした口答えや、やるべきことをやらなくなるなど、小さな変化で表現します。SOSはわかりにくいものなのです。確証バイアスが機能すると、こういった変化の意味を理解することなく、そのまま突っ走ってしまいます。そして、何かのきっかけで子どもは不満を爆発させます。
親の「よかれと思って」が非行・犯罪まで行き着くことになるのです。
もちろん、いまの子育て方針でうまくいくこともあるでしょう。問題ないのであればいいのです。ただ、確証バイアスが働きやすいことは知っておいてほしいと思います。