YouTubeという入口から出口となるビジネスへつなげていく
YouTubeとSNSのいちばんの違いは、動画配信には表に出るキャラクターが必要なことです。写真と文字の投稿なら、発信者が「企業」という形のないものであっても成り立ちます。でもYouTubeで同じことをするのは難しい! 動画の場合、企業の理念も商品のPRも、画面に登場している「会社の中の人」の口から語られるからこそ興味をもってもらえるのだと思います。
私がYouTubeに出ているのも、魚や魚屋の仕事に興味をもってもらいたいからです。魚をさばく技術なら、父やベテラン社員のほうが私よりずっと上。料理だって、私の何倍ものキャリアをもつ職人さんにはかないません。「魚のさばき方」や「魚料理のコツ」を紹介するためなら、私以外に適任者がいるのです。
それでも私が表に出るのは、魚や魚屋の仕事を身近に感じてもらうためです。
「魚屋」というと、鉢巻きをした男性が大きな包丁で豪快に魚をさばく、というイメージがあります。「魚料理が上手な人」といえば、白衣の似合う熟練の職人さんを連想する人が多いでしょう。でも私は、そのどちらにも当てはまりません。
「いかにも魚屋」の父が魚をさばく動画は、魚好きな人には参考になるはず。ただし魚を扱った経験があまりない人には、「素人には無理そう」というイメージを与えてしまう可能性もあります。でも、魚屋のイメージがない私が家庭用サイズの包丁で魚をさばく動画なら、身近に感じてくれるかもしれません。魚のプロである父にはない目線からの解説も、私だからできることです。
ベテランの職人には見えない私が、家庭にあるもので魚料理をつくってみせれば、魚料理が実は簡単であることが伝わるはず。「あの人にできるなら、自分にもできるかも?」と、魚を扱うことのハードルが下がると思うのです。
私はYouTubeを、「魚にくわしい人だけが見る動画」とは考えていません。魚のことをもっと知りたい、もっと食べてみたい、と魚に興味をもってもらう「入口」の役割を果たすものにしたいと思っています。