がん検診でパニックになる日本人…不安をコントロールするためのカギは「前頭葉」【専門医が解説】 (画像はイメージです/PIXTA)

脳の老化は「前頭葉」から始まり、前頭葉が老化すると、脳全体が老化する、とルネクリニック東京院院長和田秀樹氏は言います。それでは、どのようにすれば、私たちの前頭葉は衰えないままでいられるのでしょうか。本連載は、和田秀樹氏の著書『50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる! 老いない習慣』(PHP研究所)から一部抜粋し、お届けします。

 

不安が日本人の判断を歪ませている

大半の日本人がコントロールできていない感情は、怒りではありません。怒りよりもはるかに、日本人の判断を歪めているのは、不安の感情です。

 

たとえば、「集団からはじかれるかもしれない」という不安から、言いたいことを言わず、そのうち自分がどういう価値観を持っているのかさえ見失っていく人たちがいます。

 

上司ににらまれたら怖いからどんな指示にも従う、という人もいます。

 

世間からの糾弾を恐れて後ろ暗い事実を隠蔽する、証拠となる書類をシュレッダーにかけるなどの犯罪行為に走ることもあります。

 

それが明るみに出れば、その人の将来は閉ざされてしまいます。過剰な不安は、怒りに任せた暴言以上に、社会的生命が絶たれるレベルの深刻な結果を引き起こします。そして日本では、怒りのせいで破滅する人より、不安のせいで破滅する人のほうが多いのです。

日本人の特性は政治にも…

不安によって、犯罪被害者になることもあります。その典型例が「振り込め詐欺」です。加害者たちは、ターゲットを不安にさせることで、金銭を巻き上げます。日本人の心理や行動の特性を利用した犯罪手法と言えるでしょう。

 

また、不安に飲まれると、変化に対して過剰に臆病になります。

 

多くの国民が自民党に票を入れ続けるのも、「変わることが怖い」という心理が少なからず働いていると思われます。「このまま一党独裁体制的な国になっていくほうが怖いのでは」という「常識」が通用しなくなっているのも、不安が大きすぎてまっとうな判断ができなくなったからでしょう。

 

不安は、日本の外交にも影を落としています。

 

アメリカに嫌われることを盲目的に恐れる日本は、慢性的に独立した外交ができなくなっています。米軍基地に関してもまともに交渉すらしようとせず、沖縄では民家の上空を戦闘機が飛び、ときに事故を起こして民間人が犠牲になり、横田空域では日本の航空機が自由に飛ぶことが許されないまま、70余年が経っています。

 

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    ルネクリニック東京院 院長

    1960年生まれ。
    東京大学医学部卒業。
    東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカカール・メニンガー精神医学学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、ルネクリニック東京院院長。
    30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として高齢者医療の現場に携わる。
    『自分が高齢になるということ』(新講社)、『年代別医学に正しい生き方 人生の未来予想図』(講談社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『「人生100年」老年格差』(詩想社)『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『80歳の壁』(幻冬舎)など著書多数。

    著者紹介

    連載『50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる! 老いない習慣』

    50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる! 老いない習慣

    50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる! 老いない習慣

    和田 秀樹

    PHP研究所

    脳の老化は「前頭葉」から始まり、 前頭葉が老化すると、脳全体が老化する。 ベストセラー著者が、前頭葉が衰えない習慣を指南! 前頭葉は意欲をつかさどる部位。 意欲が衰えると、頭を使わなくなるので、脳全体が衰えて…

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