がん検診でパニックになる人の誤った選択
不安という感情そのものは、悪いものではありません。不安は本来、この先に起こりうる悪い事態を回避するためのものです。
前頭葉が働いていれば、リスクを予測し、回避策を考えることができます。
どのくらいの確率で、どのような事態が起こるか。何をすれば回避できるか。できなければどうリカバーするか。それでも無理ならプランB、プランCで対応を……というように、前頭葉が働けば働くほど、多様な対策を用意できます。
ところが、日本人の不安は、対策までたどり着かないことが多いのです。コントロールが働かず、怖いという感情だけが先走る、つまりパニックになるのです。
不安をコントロールできていれば「これもできる。こういうやり方もある」と複数の対策を考えられますが、パニックになっているときは、一つの答えしか出せません。たとえば、「もうダメだ」と悲観的になる。あるいは、「あいつが悪いのだ」と誰かへの恨みに転嫁する。はたまた「考えたくない」と目を背けてしまうこともあります。
がん検診の結果に翻弄される人などはその好例です。
がん検診の目的は、「早期発見」にあります。進行する前に見つけて、すぐ治療して、命を守るためのものです。
ところが、早く見つけるためにではなく、「がんの不安を払拭するために」受診する人が少なからずいるのです。このタイプの人は、がんではないことを確かめたいという一心なので、がんが見つかるとパニックになります。
ここでの適切な対応は、いい病院を見つけて、きちんと治療を受けることです。さらにいいのは、どこの病院が自分に合っているかといった情報を検診の前に調べておくことです。
そうした備えをしていないと、さらに間違った判断に陥りがちです。よく考えもせずに、目についた病院を治療先に選んで、意に沿わない治療方針で心身ともに疲弊する、というのが典型的なパターンです。
不安と向き合うか、不安に飲まれるかで、結末は天と地ほども変わるのです。