(※写真はイメージです/PIXTA)

「金利を下げれば景気はよくなる」。これが経済における従来の原則です。しかし、20年以上も低金利時代が続く日本ではちっとも景気がよくなっていません。一体なぜなのでしょうか? 角川総一氏の著書『なぜ日本の金利は常に米国より低いのか 131のステップで誰でもできる金利予想の教科書』より、金利引き下げと景気の関係を見ていきましょう。従来の原則の仕組みを確認しつつ、今急速に広まっている“新常識”を解説します。

「金利を下げる⇒景気が良くなる」という原則

先生「中学や高校でも経済政策についてほんの少し習うけど、この因果関係なんかはその代表じゃないかな。つまり、景気が悪いときには日銀が金利を引下げるってやつだ。つまり金利を下げれば景気は良くなるという原則だ」

 

生徒「これは…。なんとなく習った覚えがあるわ」

 

先生「だろうね。復習のつもりで一とおり聞いておいてほしい」

金利低下によって企業、個人ともに借入れ負担が減少

金利は、経済社会全体を流れているお金の流れを変えていく。

 

金利が下がれば、借り手に有利になるため借入れが増える。利益率が3%の企業なら、金利が5%じゃあ儲からないけど、1%に下がれば1%で借りたお金で3%のもうけが出るわけだから、正味2%分がもうけになる。

 

だから金利が1%になれば、積極的に借りて生産を増やそうとする。生産を増やすために機械設備を増設する。機械メーカーの売り上げも増えるだろうね。月間1,200台生産していた工作機械を1,300台に増やす。そうすると、売り上げが増え、利益が増えるわけだから賃金も上げられる。

 

こうして従業員の収入が増えれば、人々の消費が増える。だから企業はさらに生産を増やす。こんな風にしてどんどん経済は回りながら拡大していくんだ。

 

個人だってそうだ。住宅ローン金利が15年前のように3%だったら「毎月の返済可能額から言って、借入れはせいぜい3,200万円だな」ってなるのが、今は1%だ。こうなれば「3,800万円借りても月々の返済額は同じだな」ってなる。

 

そうすると、購入物件の敷地も32坪から40坪になり、それに応じて台所のシステムもより豪華になり、「道路に面した敷地への入口は思い切って冠木(かぶら)門構えの造りにしようか」ってなる。

 

こんな風にして、建設企業の売り上げが増え、建材メーカーの売り上げが増え、住宅購入に伴って設備にかける金額が増えるため、住宅建材のLIXIL、旭化成、文化シヤッターは門扉や塀、車庫などの売り上げ建造費が増える。

 

そこで働く従業員の時間外手当が増え、そうすると消費が増え、たとえば外食産業の売り上げが増える。そこで収益も増えるから賃上げ幅も大きくなる。こんな風にどんどん好循環が起きる。まさに景気が良くなっている典型的な状態だ。

 

つまり、金利引下げは景気に活を入れ、目を覚まさせ、そしてお金の循環が良くなり、企業、家計、お店など経済活動に参加しているあらゆる層が潤う。これが、金利引下げによって景気がよくなる基本的なプロセスだ。

 

 出所:角川総一著『なぜ日本の金利は常に米国より低いのか』(ビジネス教育出版社)
[図表1]金利が下がると景気は良くなる 出所:角川総一著『なぜ日本の金利は常に米国より低いのか』(ビジネス教育出版社)
次ページでは、なぜ日本の景気はよくならないのか?

※本連載は、角川総一氏の著書『なぜ日本の金利は常に米国より低いのか 131のステップで誰でもできる金利予想の教科書』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

なぜ日本の金利は常に米国より低いのか 131のステップで誰でもできる金利予想の教科書

なぜ日本の金利は常に米国より低いのか 131のステップで誰でもできる金利予想の教科書

角川 総一

ビジネス教育出版社

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