「金利が下がっても景気は好転せず」という新常識
先生「でもね、日本ではもう20年以上も低金利が続いている。預金利息ゼロなんてあたり前ってなっちゃった。企業が借りるときにも1年以内だったら0.5%とか0.6%だ。にもかかわらず景気がいいとはとても思えない」
生徒「そうよね。最近では世界各国のなかでも、過去30年間の賃金上昇率は日本がダントツのビリだってことが話題に上ったわね」
先生「たしかにそうだ。OECDの調査では過去30年で日本人の年間賃金は4%増えただけ。この間にOECD平均で33%プラス、米国は48%増加している。景気は賃金に最もよく表れるからね」
金利が下がれば利息は減少し、消費は減退する
日本は世界でもいち早く金利を下げた国だ。米国やドイツ、イギリスなど世界各国よりも10年以上前から金利はダントツに低かった。なのに、景気はほとんどよくなっていない。こんなに金利が低い状態が続いてきたのに、過去10年の成長率は1%にも届かない。これじゃ、金利を下げれば景気は良くなるっていう原則は「本当かいな?」ってなる。
実は最近では、金利を下げても景気は良くならないんじゃないか、っていう考え方が急激に広がってきたんだ。少なくとも昔ほどには、金利引下げの効果はない、っていう意見が多い。
いろんな理由がある。そもそも「金利が下がれば企業がもうかって景気が良くなる」っていうのは、一方的な見方だと思わないかい。だって、お金を借りる企業の側の事情はそのとおりだけど、お金を貸す側、つまり預金者からみれば利息が少なくなるんだよ。利息が減るってことは収入が減るってことだ。そこで消費を減らす。モノが売れない。これは景気にはマイナスだよ。
ここで経済の原則を話しておこうか。それはね、「借りる人」があれば「貸す人」がいるってことだ。借りる人の事情だけを取り上げて、貸す人の事情に目をつぶるなんて変だよね。日本では、もう20年以上にもわたって預貯金の利息はほぼゼロだ。
僕の20歳代には1年定期が5~6%だった。100万円の預金を持っていたら月あたりの利息は5,000円くらいにはなった。そのころの月給は8万円だったから月給の1割弱の利息が手に入ったんだ。これ大きいよ。
2つめは、これまでは金利が下がると利息が減るから預金しない、ということになっていた。つまり、お金を使うから消費が増え景気が良くなるっていうのが常識とされてきたけど、これどうも違うっていうんだ。
オランダの大手銀行(アムロ銀行)が「預金金利がマイナスになればどうする」って10カ国くらいの人にアンケートしたら「預金を増やす」って人が半分以上だったんだ。理由はなんだったと思う? 利息がもらえないんだったら、元本自体を増やすほかない、っていうんだ。従来の常識とは逆だ。
これは、今の日本にも当てはまりそうじゃないか。預金金利がゼロなのに、個人の預貯金の残高は増えているんだ。
こう考えると、金利が下がると景気が良くなるっていうこれまでの常識は、一方的な見方だったと言わなきゃならないね。