(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 17,523.81 pt (+0.57%)
中国本土株指数 5,945.11 pt (+0.74%)
レッドチップ指数 3,432.33 pt (+0.77%)
売買代金963億1百万HK$(前日1,272億0万HK$)

アント・グループに罰金へ、規制強化に終止符か

22日、中国の国家市場監督管理総局は、不正競争防止法の改正案を公表した。内容は、IT大手が顧客情報やアルゴリズムを悪用して市場での競争を歪めるもので、顧客情報の活用をルール化し、不正や違反への罰則について細かく明記された。

 

ただ、市場は、これで2年余りにわたりフィンテック企業を締め付けてきた当局の方針が確定し、ルールが明確になることで、IT企業の活動がしやすくなり、不透明な環境に終止符が打たれるとの肯定的な評価が出ている。

 

また、中国人民銀行が、Eコマース最大手アリババ傘下の金融会社アント・グループに10億ドル近い罰金を科す方針も伝えられた。罰金の確定は早くても2023年第二四半期との見通しだが、それが決着を見れば、同社による金融持ち株会社の設立申請が認可され、上場に向けて動き出す可能性が取り沙汰された。

 

アント・グループは2020年に約370億ドル規模の新規IPOを上海と香港で上場を計画していたが直前で頓挫、その後、幾度となくIPOを検討していると報じられてきた。
こうした決定により、中国国内の決済大手やフィンテック企業が、健全な発展に向けて活動を活発化させるとの期待が強まる可能性がある。

香港市場は6日ぶりの反発

23日の香港市場は朝方、前日終値を挟んで一進一退の動きで取引されていたが、上述したIT企業関連の材料を手がかりに大型IT株が相場を牽引した。ハンセン指数は6日ぶりに反発し、前日比0.57%上昇した。

 

主要ITネット銘柄が上げ幅を拡大し、インターネット検索の百度(9888)は3.4%高、Eコマースの京東集団(9618)は3.3%高、アリババ(9988)は3.1%高、オンラインゲームの網易(9999)は2.5%高、インターネットサービスのテンセント(0700)は1.7%だった。

 

ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比1.13%高とアウトパフォーム、一時は2%強まで上げる場面もみられた。前述したITネット株のほか、動画投稿の快手(1024)は5.7%高、新興EVのNIO(9866)は4.6%高、半導体ファウンドリーの華虹半導体(1347)は3.2%高と上げ幅が目立った。

 

一方、リオープン銘柄や飲食関連は連日売りが目立った。レストランチェーンの海倫司国際(9869)は4.9%安、呷哺呷哺(0520)は3.2%安、肉料理専門店の周黒鴨国際(1458)は3.1%安だった。

 

中国本土株市場は上海総合指数が前日比0.26%高の3,096.91、CSI300が同0.11%高の3,773.53と2日続伸した。前日の米株高を好感したほか、メスター連銀総裁の発言を受けて長期金利が低下したことや中国の景気テコ入れ策に対する期待も買いをあと押しした。

 

ただ、中国本土の新規感染者数は連日で最多を更新し、株価の上値は総じて重い展開にある。23日、上海市は市外からの訪問者を対象に、到着から5日間はレストランを含め公共施設の立ち入りを禁止したほか、各地では不要不急の移動を控えるよう求めれている。

 

中国では、感染抑制対策の方針を転換したばかりだが、結果としては、悪いタイミングでの判断となった。一部都市では再度ロックダウンの実施に追い込まれるなど、中国は経済と医療システムの双方に悪影響が出ている。今後も、局所的な都市規制が敷かれ、一段と経済活動が停滞する可能性も指摘されている。
 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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