(※写真はイメージです/PIXTA)

都心では「車離れ」が進み、駐車場に空きが目立っているケースが少なくありません。マンションの管理費等は、駐車場利用料が入ることを前提に組まれていることが多く、利用率が下がると財政を圧迫し、赤字会計となってしまいます。マンショントレンド評論家として数々のメディアで発信を行う日下部理絵氏が、マンション管理組合が特に頭を悩ませている「機械式駐車場」の問題について、事例をもとに解説します。

人気のない駐車スペースで「年間270万円」の収入減

1ヵ月後、2回目の理事会が開催された。マンションにある駐車場は、平面式16台(来客用2台含む)、地上1段、地下2段の「ピット式3段」の機械式駐車場が14機(42台分)で、合計58台分のスペースがある。

 

総戸数は54戸なので、たしかに1住戸1台以上確保されている。平面式が1番人気で、次にピット式3段の上段と中段で、下段は人気がない。

 

新築時に設定された毎月の管理費等は、収入に駐車場利用料が入ることを前提に管理費会計や修繕積立金会計が試算されていることが多いという。

 

特に一家に一台、車を所有していた時代のマンションではその傾向が強く、車離れによって空き駐車場が増えれば増えるほど、収入源がなくなってしまう。

 

まずは陣内さんのマンションの理想的とされる満車時と、現在の収入を見てみたい。

 

【月額使用料/満車の場合】

 

〇平面式(屋根なし):月額1台1万5000円×14台=21万円
 来客用2台は無料

 

〇ピット式3段(14機42台)
上段(地上):月額1台1万4000円×14台=19万6000円
中段(地下):月額1台1万3000円×14台=18万2000円
下段(地下):月額1台1万2000円×14台=16万8000円

 

〇合計……月額75万6000円(56台分)
年間907万2000円

 

 

【月額使用料/現在(38台契約)使用率68%】

 

〇平面式(屋根なし):月額1台1万5000円×14台=21万円
 来客用2台は無料

 

〇ピット式3段(14機42台)
上段(地上):月額1台1万4000円×12台=16万8000円(2台空き)
中段(地下):月額1台1万3000円×8台=10万4000円(6台空き)
下段(地下)月額1台1万2000円×4台=4万8000円(10台空き)

 

〇合計……月額53万円(38台分)
年間636万円

 

現在18台の空きが出ているので、年間で約270万円も収入が少なくなっている。たしかにこれでは、単年度赤字で余剰金を食いつぶしているわけだ。

 

このマンションでは駐車場使用料の収入は、全額、管理費会計の収入にされているため、差額271万2000円を戸当たりで割ると、年間約5万円を追加で負担しなければ補填できない。

 

実際の管理費等は、原則「専有部分の床面積割合」で負担する。たとえば、マンション内で一番広い部屋の所有者が車を所有していないとする。車を所有していないので当然、駐車場も借りていないが、駐車場の負担は誰よりもしないといけない。実に不公平である。

 

そこで理事会で検討の結果、まずは居住者のニーズを把握するため、駐車場についてアンケートをとることになった。また管理会社に管理費会計の赤字黒字のボーダーラインを知るべくシミュレーションも依頼した。

 

 

日下部 理絵

マンショントレンド評論家

オフィス・日下部 代表

 

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※本連載は日下部理絵氏の著書『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

60歳からのマンション学

60歳からのマンション学

日下部 理絵

講談社

私たちは、本当にマンションを終の棲家にできるのか? 2030年、分譲マンション約780万戸のうち、築30年以上が過半数を超える。現在、安全・安心・快適なマンションへの永住指向が強まる一方、自らの老いとマンション老朽化…

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