会社で最も無力な新卒社員
ルールを設定して守らせることと同時に必要なのが、明確な目標設定です。「まだ数字目標は追えないだろうから、姿勢を評価してあげる態勢を」という形で新卒社員を迎え入れてしまっている企業が非常に多いです。というより、ほぼすべての企業でそうなってしまっているといっても過言ではないでしょう。
これも実は間違っています。会社のなかで求められている役割が最も不明確な人、もしくは不明確であっても平気な人は誰でしょうか。そうです。社長です。社長は会社のなかに、自分に求められていることを教えてくれる人はいません。社長が求められていることを把握しにいく場所は市場になります。
とはいえ、市場に「なにをすればよいですか」と聞いても答えてはくれません。ですから、必死に探しに行きます。それでも完全に明確にしてもらえることは絶対にありません。その状況で考え、ひねりだし、決定して組織を動かしていくのです。社長にはその力が求められますし、それができるからこそ社長なのです。
そう考えていくと、会社で求められていることを最も明確にしてあげるべき存在は、新卒の社員たちです。彼らは会社で最も力のない人たちです。求められていることを知ろうとするにもその経験がないためできませんし、仮に本人ができたと思っても、経験の浅い彼らですからその内容が会社や上司から求められていることと合致している確率は低いでしょう。
それなのに、「積極的に」「主体的に」「精力的に」といわれてしまうと、もう迷うしかありません。結果、本人が「こうすれば会社のためになる」と思って行動したことが評価されないものなら、そこでもまた精神がすり減っていきます。それが「こんなに頑張っているのに」となり、離職に至るのです。
加えて、彼らへの要求事項が曖昧であることが、彼らの成長を妨げることもまた問題です。定性的な目標に対する結果のフィードバックを受ける際、「もう少し積極性が欲しい」と不足を指摘されても、新卒社員はなにをどう改善すればよいかが明確になりませんので、成長できません。
逆に「積極性がよかった」と取り組む姿勢を評価されてしまうと、アピールや取り繕い方を磨いていくべきだと勘違いしてしまうことになり、会社が望む姿とは違う方向への成長を目指すようになってしまいます。力がないからこそ、始めたばかりだからこそ、成すべきことは明確に、定量的に示してあげる必要があります。
ここまで、新卒採用とその後のマネジメントについてお話ししてきました。前述のとおり、離職率が高止まりしているということは、どの企業も明確にこの問題に対処ができていないということです。ということは歓迎し、優しくし、居心地のよい環境をつくってあげることは、新卒社員が望む環境ではないということにほかならないのではないでしょうか。
本記事で紹介した内容を実践すれば、会社に劇的な変化が起こるはずです。なにが本当に新卒社員のためになるかを考え、勇気を持ってその環境をつくりだしてあげてください。
有手 啓太
株式会社識学
西日本営業部 部長 上席コンサルタント