Q7. 被保険者が亡くなったとき、相続の問題が起こらないか?
【回答】
被保険者が亡くなったとき、遺族が、保険金を受け取る権利を主張してくるのではないかという問題を指摘されていることと思います。
「生命保険の買取」すなわち「保険金請求権の譲渡」の手続きは、戸籍謄本に名前がある家族全員の承諾を得て進めることになっており、請求権自体が投資家に移転してしまうので、そのような問題は生じないと考えられます。
Q8. 入院給付金も「買取」の対象となるか?
【回答】
買取の対象は「死亡保険金の請求権」だけです。入院給付金など他の請求権はそのままなので、被保険者は入院給付金等を保険会社に請求することができます。
まとめにかえて|倫理の問題について
「生命保険の買取」は、かつて欧米で「死神ビジネス」と揶揄されたこともありますし、ヨーロッパでは今でも「生命保険の中古市場」などと言う人がいます。「誰がいつ死ぬか」に投資して利益を得ることに倫理上の問題があるという意見は根強くあります。
しかし、この点についても現在ではある程度の見解が出ています。
第一に、生命保険の買取金額は解約返戻金よりも高い額に設定されますから、生命保険会社が一方的に決めた解約返戻金より高い額を契約者(売主)が受け取れるのであれば、倫理に反するとはいえない、という考え方があります。また、買取が成立したからといって保険会社の利益を害することもありません。
第二に、生命保険の買取で支払われるお金は、被保険者が元気なうちに利用できるものとなり、被保険者にとってのリスクはないと考えられます。
第三に、そもそも、売りたいという人(売主)、買いたいという人(買主)の双方の要請がなれれば、生命保険の買取が世に出ることはないといえます。
むしろ、生命保険の買取は、現行の生命保険契約が生活困窮時には解約もしくは失効による解約返戻金を受け取るという方法しかないという非効率性を是正するものであるといえます。需要と供給のバランスを市場で修正するということは他のマーケットでもおこなわれてきました。そして、売主が複数の買主から入札を受けオークションがおこなわれることで、売主と買主の双方が最善策と認めるならば、生命保険の買取だけを異質なものとする明白な根拠はありません。
実際に、多くの患者や高齢者がその恩恵にあずかっています。
しかも、死亡率の予測は生命保険自体が依拠するものですし、個人や団体の年金,老後生活商品やリバースモーゲージなども同じです。
加えて、国の年金制度には、加入者や受給者の早期の死亡により年金給付原資を確保するという側面がありますが、生命保険の場合は逆に、被保険者が定期保険の満了よりも長生きすることで保険会社が利益を得るしくみです。
これらの原理原則はすでに確立され、広く国民が享受しているものです。生命保険の買取も同じ原理原則に貫かれたものであるという観点から、倫理に反するものではないと考えることができます。
濱崎研治
株式会社リスク・マネジメント研究所
代表取締役