(※画像はイメージです/PIXTA)

人生100年時代、誰しも、病気やケガ等で治療費や生活費に困窮するリスクがあります。また、老後資金の問題もあります。それに対する有効な手段の一つが、加入中の「生命保険」を売却してまとまったお金を受け取る「生命保険の買取」です。海外では普及してきていますが、日本ではまだ始まったばかりです。本記事では、今後、わが国で「生命保険の買取」を活用するうえで留意すべき点について、Q&A形式でお伝えします。

Q3. 公的機関で相談援助の仕事に就いていたとき、高次脳機能障害で保険を解約して生活保護を受給したケースがあった。「生命保険の買取」とどちらを選ぶべきだったか?

【回答】

 

アメリカのテキサス州では、2013年に生活保護と「生命保険の買取」を融合させた州法が州議会で可決・成立し、その法律はあっという間に他の州に拡大しました。

 

その内容は、以下の通りです。

 

・高齢の生活保護申請者は、生活保護を受給する前に加入済みの生命保険契約を州が運営する信託会社に譲渡する

・その譲渡代金をプールして、一部を生活保護申請者に毎月受給する

・譲渡代金が枯渇したら州の生活保護の受給が開始する

 

生活保護申請者はまず「生命保険の買取」の制度を利用することで自らの財産で生活ができ、州は予算を減らすことができ、介護者は手厚いサポートが可能になるということで、この法律は「トリプルWin」と言われました。日本においても検討の余地がある制度であると考えられます。

 

Q4. 日本の保険会社は、保険金請求権の譲渡を想定しているのか?

【回答】

 

かつては、保険会社は保険金請求権が第三者に譲渡されることを想定していませんでした。

 

しかし、その後、2010年の保険法改正により、保険事故の発生前に抽象的な保険金請求権が発生していることを前提にして、保険金受取人(契約者)がこれを譲渡できること、すなわち「生命保険の買取」ができることが規定されました(保険法47条)。したがって、現在は想定されているといえます。

 

取引される金額が解約返戻金を大きく上回ることを考えれば、保険契約者・被保険者の利益になることは確かです。保険会社には積極的に生命保険契約が流通できる環境づくりをお願いしたいと思います。

Q5. 売却代金に所得税はかかるか?

【回答】

 

アメリカではクリントン政権のときに、弱者救済の観点から余命2年未満の患者(保険契約者・被保険者)が「生命保険の買取」を利用して受け取った代金は非課税とされました。これに対し、余命が2年超の場合には、譲渡金額から保険料総額を控除した額に所得税またはキャピタルゲイン税(日本でいう譲渡所得に対する所得税にあたるもの)と州税がかかります。

 

日本では、このような特別な法の定めがありません。したがって、所得税法に則って処理されることになります。「生命保険の買取」すなわち「保険請求権の譲渡」が行われた場合、受け取った代金から保険料総額を控除した額が所得税の課税対象となります。ケースバイケースで一時所得あるいは譲渡所得に該当すると考えられますが、計算方法等の詳細については、税務当局に確認する必要があると思います。

Q6. オークションの前の情報提供として、本人の病状について投資家側にはどのように説明していますか?

【回答】

 

まずは保険契約者・被保険者に対し、生命保険のオークションについて説明し、理解してもらう必要があります。そのうえで、診断書の名前と生年月日を消して各投資家に開示することを認める承諾書をもらいます。

 

投資家側にももちろん、個人情報であることを理解してもらい、取り扱いに注意を促します。

 

事前に保険契約者・被保険者から書面で承諾を得るべき事項としては、その他にも、以下が挙げられます。これらについては、本人だけでなくご家族全員からも署名をもらっています。

 

・社会保障制度でカバーされる額が減るかもしれないこと

・受け取った代金の税務処理について税理士等の専門家に確認するべきであること

・債権者からの請求があるかもしれないという注意喚起

・被保険者死亡時の報告義務

次ページ保険契約者の権利を守るためのルール

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