むかし入った生命保険には「隠されているもう一つの財布」がある
たとえば、交通事故で下半身不随になったり、進行性の難病に罹ったり、がんと診断されたりして仕事を辞めざるを得なくなったという人が、皆さんの周りにも一人二人いらっしゃるのではないでしょうか。
2025年には65歳以上の高齢者が30%に達するというこの日本社会。人生、長くなればなるほど何が起こるかわかりません。いつ誰に起こるかもしれない不測の事態に備え、多くの人は生命保険に加入しています。
そしていざ、本当に困ったとき、自分がこれまでに掛けてきた生命保険からお金を受け取る方法としてまず思い浮かぶのは、「解約」、あるいは「契約者貸付」、余命を宣告された場合などに有効な「リビング・ニーズ特約」といったところでしょう。
しかし、ここにもう一つ、「生命保険の買取」という選択肢があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。この仕組みを知ると、いま入っている生命保険には「隠されているもう一つの財布」があることが納得できるはずです。この仕組みは個人だけでなく、法人でも利用できます。
加入している生命保険を「売る」ことができる
「生命保険の買取」とは、保険契約者が加入済みの生命保険契約を第三者の投資家に売却することです。売却金額は、解約返戻金より高く、かつ死亡保険金を下回る額となります。
売主である保険契約者は、生命保険を買い取ってもらうことにより、一括して現金を受け取ることができるばかりか、以降、保険料を支払う必要もなくなります。一方、生命保険契約を買い取った投資家は、以後の保険料を支払い、被保険者が死亡したときに死亡保険金を受け取ります(【図表1】参照)。
生命保険の買取が選択肢になるとき
生命保険の買取が有効なのは、たとえば以下のようなケースです。
「自分が死亡したとき、家族の生活と子供の教育資金を確保するために」と、何年も前に生命保険に加入していた。ところが重い病にかかり、思うように働くことができず収入が激減。毎月の保険料と治療費の支払いが家計の大きな負担となっている。何とか今の困窮から抜け出したい。
生命保険を活用しようとする場合、ふつうに考えつくのは冒頭に記したとおり、(1)出費を減らすために保険を解約して「解約返戻金」を受け取る、(2)保険契約から「契約者貸付」を受ける、(3)死期が迫ってから「リビング・ニーズ特約」により保険金を受け取る、の3つです。
しかし、これらの方法はいずれも解決になりません。すなわち、(1)「解約返戻金」は多くの場合、わずかな額しか受け取れません。(2)「契約者貸付」で受けられる額は解約返戻金の一部に限られます。(3)「リビング・ニーズ特約」は死期が6か月以内に迫ったときにしか使えません。
しかも、保険料の支払いが滞ると、2か月後には保険契約が失効してしまいます。銀行や貸金業者は、生命保険を担保とする借入に応じてくれません。
生命保険の買取は、こういったときに、最後の手段として機能します。