食後すぐ「5分間だけ」やればOK!血糖値スパイクの抑制を意識した“手軽な運動”【総合内科専門医が解説】

食後すぐ「5分間だけ」やればOK!血糖値スパイクの抑制を意識した“手軽な運動”【総合内科専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

食後過血糖(血糖値スパイク)を下げるには、どんな運動をすればよいのでしょうか? 総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、糖尿病の方にオススメの「桃色筋肉運動」を解説します。桃色筋肉運動とは何かを知るために、まずは有酸素運動と無酸素運動の「使われる筋肉」の違いから見ていきましょう。

「運動の種類」と「使われる筋肉」の関係

一般的に筋肉は、瞬発的に大きな力を出す「速筋(白筋)」と、持久力を発揮する「遅筋(赤筋)」の2つに分けて説明されてきました。それぞれの筋肉の特徴を、「その筋肉が使われる運動」から見ていきましょう。

 

■①嫌気性運動(無酸素運動)、強度なレジスタンス運動

短距離走、バーベルなどを使った筋肉トレーニング、相撲など、短時間に行う強度の高い運動のことです(※注:誰もがどこでもできる運動ではないですね)。レジスタンス運動とはいわゆる筋トレです。

 

【使われる筋肉:速筋(白筋)】

速筋(白筋)は、大きな瞬発力を発揮する際に使われます。酸素を使わない運動に使われる筋肉なので、速筋(白筋)を使う運動は「無酸素運動」とも言われます。

 

エネルギー源はブドウ糖です。短距離ランナーやボディビルダーは想像しやすいでしょうが、実はお相撲さんもそうなのです。

 

ただ、お相撲さんも瞬発力に必要なブドウ糖を頻回に使ってはいますが、マラソンをするイメージがないことでおわかりのように脂肪燃焼はあまりできていないためか、筋肉はあるものの皮下脂肪がついています。

 

■②有酸素運動

ジョギングやウォーキング、サイクリング、水泳など、筋肉に軽〜中程度の負荷を継続的にかける運動のことです(※注:無酸素運動よりも多くの方ができそうですが、時間と場所が必要です。マラソンランナーをイメージしてください)。

 

筋肉を動かすエネルギーの一つである脂肪酸を、酸素を利用して得る運動となるため「有酸素運動」と言われます。脂肪が酸素によって燃焼されて脂肪酸が生じます。

 

【使われる筋肉:遅筋(赤筋)】

酸素を利用するため、赤血球のヘモグロビンが使われます。そのため「赤筋」と言われますが、速筋に対して「遅筋」とも言われています。

糖尿病には「無酸素運動+有酸素運動」が効果的

レジスタンス運動と有酸素運動の組み合わせが糖尿病の改善に有効であることは、ウィーン大学の研究チームによって、ヨーロッパ糖尿病学会発行の医学雑誌『Diabetologia(ダイアベトロジア)』に報告されています。

 

同報告によれば、2種類の運動を平行して行うことで、HbA1cや空腹時血糖値のほか、血圧、中性脂肪値なども低下することが確認されたそうです。血糖値に限れば、2種類の運動を行うと、有酸素運動のみを行った場合より、HbA1cは平均0.17%、空腹時血糖値は平均10.6mg/dl低下。また、レジスタンス運動のみを行った場合に比べると、HbA1cは平均0.62%、空腹時血糖値は平均35.8mg/dl低下した、という興味深い報告をしています。

最近明らかになった「桃色筋肉」の存在

最近の研究で、白筋・赤筋以外に「桃色筋肉」という筋肉が存在することが明らかになっています。桃色筋肉は速筋と遅筋が混ざった筋肉のことです。ブドウ糖を利用する速筋と脂肪酸を利用する遅筋の両方の特徴が発揮されるので、糖尿病治療としての運動には、この桃色筋肉を強化させることがうってつけと思われます。

 

余談ですが、確か北欧のどこかで、結果的に“桃色筋肉をつける運動”を繰り返した人の筋肉生検を行ったところ、白筋・赤筋でなく桃色筋肉が見つかったとNHKの番組でとりあげていました。桃色筋肉の名前はそこから来ています。日本では恐らく行われない実験だと印象的に思ったのを覚えています。

「桃色筋肉をつける運動」はこうやる!

私は無理なく継続できることを推奨していることから、「自宅や職場をスポーツジムへ」をスローガンにしています。

 

<おすすめの桃色筋肉運動>

どの運動も呼吸を止めないで行うことです。

 

1)スロースクワット

勢いをつけずにゆっくり5〜10秒程度かけて下がり、動きを止めず同じくゆっくり上がる。この動きを5分程度行います。

 

2)全身の筋肉を緊張させた「壁押し」や、相撲取りの「鉄砲」

壁や柱などを全身の力を込めて押す運動です。全身の筋肉を意識して、最大の70%ほどの力で押し、その状態を7秒ほどキープ。少し休んでから、同じ要領で壁や柱を押す。この運動を5分ほど行う。

 

3)体力に合わせた腕立て伏せ

これも5分程度、自分のペースで行います。きついようなら膝をついてもいいですが、70%ほどの力を込めることが大事です。自分にあった動作でアレンジして構いません。筋肉に力をみなぎらせることを意識してください。

 

4)適度な重さのダンベルを利用する

 

5)俳優・美木良介氏が考案した「ロングブレス」のような運動もいいでしょう。

 

PIXTAの画像より作成
【図表】おすすめの桃色筋肉運動 PIXTAの画像より作成

 

運動しましょうと言うと、ほとんどの患者さんが「歩きます」と返事をしますが、歩くだけでは筋肉はつきません。そこで私は、5分間「筋肉を意識した運動」をするよう心掛けなさいとアドバイスしています。

「食後すぐ〜30分以内」に5分間するのがオススメ

食後血糖のピークは、多くの糖尿病の方においては食後1時間あたりに来るようです。その食後過血糖を防ぐには、ブドウ糖を必要とする運動が必要です。

 

運動を行うタイミングは「食後血糖値がピークに達する前」です。

 

食後5分程度の桃色筋肉運動は必ず実現可能です。食後に散歩するのもいいですが、散歩で使われるエネルギーはブドウ糖ではなく脂肪酸です。Randleサイクルといって、筋肉はブドウ糖と脂肪酸を同時に使うことはなく、どちらかになるようです。これは桃色筋肉の概念がなかった時代の説なので、どこまで通じるかはどうかはわかりません。とはいえ、最大の力の70%くらいを使う桃色筋肉運動では、少なくともブドウ糖を使うと考えられます。

 

食後すぐの運動による食後過血糖低下は、私の患者さんの経験から実感しています。もちろん、私が常に説明している食事の仕方をしっかり守った上での話です(⇒『【糖尿病】むしろ血糖値が上がることも…!? 「糖質制限」のワナ』)

 

当院では診察時、すぐ血糖値を測定するようにしています。あわせて、患者さんからは筋肉がしっかりした感じとか、腰痛が良くなったという声が少なからずあります。しかし無床のクリニックであり、大多数の方によるデータではないので、むしろ多くの施設での検証をしてもらいたいと思っています。

まとめ:「できる運動」を「継続すること」が重要

最後に、糖尿病の方へのアドバイスを再確認しましょう。

 

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1)毎食後すぐの桃色筋肉運動は基本5分程度で構いません。

2)有酸素運動で脂肪を燃焼し、内臓脂肪を減らしてインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を減らします。

3)無酸素運動をして筋肉を太くし、筋肉へのブドウ糖取り込みを増やします。

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アドバイス1)はマストです。必ず行ってください。

 

アドバイス2)3)は、余裕のある人が自分のペースで行ってください。具体的な種目を挙げると、ゴルフは2)で、テニスは3)でしょう。

 

とにかく、できる運動を継続することです。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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