「無症状だから大丈夫」?働き盛りの人が「脳」や「心臓」で倒れないための“検査”【総合内科専門医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

健診で血圧やコレステロール、血糖値などの異常を指摘されているのであれば、無症状だからといって放置してはいけません。総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、脳や心臓で倒れないために受けるべき「2つの検査」を解説します。

健診で異常ありでも「無症状なら大丈夫」?

特に気になる症状がなく、働き盛りの元気な人へ。本当は健診で血圧やコレステロール、血糖値などの異常を指摘されているにもかかわらず、症状がないので大丈夫と考えてはいませんか? 本稿ではそんな方々に向けて、早期の段階で脳血管病変や冠動脈病変を発見する方法を解説します。

 

特にオススメの検査は、次の2つです。

 

1)頭部精密MRIおよびMRA検査

2)冠動脈CT-FFR

 

それぞれの検査で何がわかるのか、また、異常が見つかった場合にどうすればよいのかを見ていきましょう。

頭部精密MRIおよびMRA検査

頭部病変の細かな病変を見落とさないための撮影条件としては、通常のT1強調、T2強調条件だけでは不十分です。T2スター、DWI法、FLAIR法など、さらには脳血管を評価するMRAの撮影条件も必要です。

 

頭部精密MRIの主な目的は、早期の脳小血管病変を見逃さないことです。

 

脳小血管病変には、

1. 無症候性ラクナ脳梗塞

2. CBMs(脳微小出血)

3. 白質病変(脳における虚血性変化)

などが挙げられます。

 

自覚症状がまったくない時点でもこれらの所見が認められた場合には、将来的な脳梗塞や脳出血のリスクのみならず、認知症のリスクでもあると言われており、大変重要な所見です。かつ決して珍しい所見ではありません。

 

参考までに、頭部精密MRIおよびMRA検査でわかる病変を挙げます。

 

1.  脳小血管病変

2.  脳動脈瘤

3. 脳血管狭窄

4. 脳動静脈奇形

5. モヤモヤ病

6. 脳腫瘍

 

上記などが無症状の方に見つかる可能性があります。2は時折、3~6は稀です。しかし万が一見つかれば、主治医と相談してください。

 

脳腫瘍に関しては、私自身の意見としては症状が出たときに受けるといいと考えています。なぜなら、症状が出てからでも十分に治療できる脳腫瘍(たとえば髄膜腫)などと、無症状で見つかっても進行が速く早期発見に繋がらない脳腫瘍もあるからです。

 

もちろん、毎年脳ドック検査を受けることが無駄と言っているわけではありません。

脳小血管病変が見られたら…

頭部精密MRIおよびMRA検査で脳小血管病変が見られたら、どんな対応が求められるのでしょうか。

 

Ⅰ)CBMs(脳微小出血)の場合

脳小血管病変の中でも、CBMs(脳微小出血)が重要な所見だと考えられます。T2スターの条件が必要です。

 

中年の方と高齢者では対応が異なります。

 

【中年の方 〜高血圧性脳出血の所見】

高血圧脳出血認められたら、まずは血圧を130mmHg以下にすることを目標にします。この対応は、働き盛りの人において、無症状で元気であるということで血圧の管理を無視している方に特におすすめです。

 

働き盛りの人では、後述する無症状性ラクナ梗塞よりもむしろ先に生じることが多いようだと講演会で拝聴した記憶があります。この段階から治療を開始しておかないと、将来的にアルツハイマー病のリスクの要因になると考えられています。もっとも、検査は大事ですが、きちんと血圧を管理するということであれば不要かもしれません。

 

【高齢者 〜脳アミロイド血管症(脳アミロイドアンギオパチー)の所見】

こちらに関しては総合的見地での判断が必要です。

 

(※以下、勝川脳神経クリニックHPより引用)

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脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amylold angiopathy: CAA)

 

高血圧性脳出血とは異なる原因として、高齢者の脳出血で見られることで知られており、 脳出血の再発をきたす事で脳血管性認知症の原因にもなります。 アミロイドアンギオパチーは、高血圧の有無に関係なく、大脳皮質下に多発性に認められ、 再発を繰り返す高齢者の脳出血の原因として問題となっております。 MRIでは、症状のない時でも微小出血として検出されます。 病態は、加齢に伴い脳血管へのアミロイド沈着とされており、高齢者の方に多く、 特に、アルツハイマー病との関係が認められております。 出血の誘因として、抗血小板薬、抗凝固薬の使用、頭部外傷が知られております。

 

【引用元:勝川脳神経クリニック「脳アミロイドアンギオパチー」(https://kachigawanouge.com/caa/)】

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II)無症候性ラクナ梗塞または白質病変

血圧のみならず、脂質、血糖管理、さらには適正な運動や食事の管理、禁煙なども含め総合的な危険因子の管理を行う必要があります。

 

これらの脳小血管病変は症状がないため放置されがちですが、後のアルツハイマーハイマー発症のリスクの1つであることは間違いありません。繰り返しますが、働き盛りの元気な人でも高血圧を無視している方は、自分が守るべき人の存在を意識して治療を受けてください。

冠動脈CT-FFR検査の有用性

■冠動脈CT-FFRで異常なしの場合

さらなる冠動脈カテーテル検査はほとんど不要です。

 

■冠動脈CT-FFRで異常ありの場合

異常の疑いあり⇒心臓シンチ検査⇒(異常なしの場合)経過観察、という流れになります。

 

ケースによっては、心臓シンチ検査をしないで冠動脈カテーテル検査⇒(狭窄ありの場合)⇒PCIや冠動脈手術、という流れになります。

冠動脈CT検査の「被ばく」について

Dual energy CT、逐次近似法など、撮像方法や画像処理の工夫により、被ばく線量を低減しつつも良好な画像を得る試みが行われています。使用するCT scanner、撮像プロトコールによって被ばく線量は大きく異なります。

 

ご参考までに、腎機能が悪く造影剤使用を躊躇する場合は、冠動脈石灰化スコアも有用です。冠動脈CT-FFR(FFR-ct)が普及すると、緊急な症状がないときの冠動脈カテーテルは不要になると考えます。この検査なら、無症状でも、ヘビースモーカーだったり、高血圧や高コレステロール、糖尿病だったり家族歴などがある方には、保険外でもリスク管理としては有効な検査だと思います。

 

(※以下、倉敷中央病院 心臓病センターより引用)

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FFRct解析は、冠動脈CT画像で狭窄(血管が狭くなった状態)が見つかった場所の血流ついて調べる検査です。従来の冠動脈CTでは冠動脈の形態(“見た目”)を評価することで治療が必要かどうかを判断していました。しかしながら狭窄度がボーダーライン(いわゆる中等度狭窄)である場合や狭窄を認める部分が複数ある場合にその部分が実際に症状の原因とでなっているか判断できない場合がありました。このような場合に、これまでは追加で別の検査を行うか、カテーテル検査を行い血流の状態を調べる必要がありました。

 

当院で2019年2月より使用可能となったFFRct解析検査では心臓CTの画像データをもとにコンピューター解析を行うため追加の検査は必要ありません。そのためカテーテルでの侵襲的な検査を行うことなく実際に心臓の血流が低下しているかどうかを診断することができます。

 

【引用元:倉敷中央病院 心臓病センター「FFRct解析検査:狭心症を非侵襲的に検査する新たな技術」(https://www.kchnet.or.jp/hdc/cardiovascular/disease/inspection/FFRCT.html)】

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私としては、多くの循環器病院では通常の冠動脈CTまではできる装置がありますが、さらなる血流評価のできるFFR解析がついた装置を持っている病院はあまりありません。この装置の普及を望む次第です。

冠動脈カテーテル検査について

冠動脈カテーテル検査は、放射線被ばく、偶発事象、コスト面を考えても、安易に行うべきではないと個人的に思っています。ただし、冠動脈カテーテルを行えるような立場にない一開業医の意見としてです。胸痛など緊急な症状があるときは、もちろんすぐ行うべき検査兼治療です。

 

最後にもう一度繰り返します。元気な働き盛りの方において、症状がないために生活習慣病を安易に考えている人にこそ、特に頭部MRIで脳小血管病変を調べること、そして、冠動脈CT-FFRを活用することをおすすめします。でも、これらはあくまでも検査であり治療ではありません。喫煙を含む生活習慣病を徹底的に管理することが本筋ではあります。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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    宇部内科小児科医院 院長
    総合内科専門医 

    日本大学医学部附属病院にて、悪性リンパ腫・白血病など血液のガン治療に従事する。その後志願し血液学の中心であった自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院での勤務を経験する。

    勤務医として将来の目標を模索していた頃に偶然に再会した前自治医科大学長の高久文麿教授の推薦で、遺伝子研究の本場であるカナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事する。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

    以来16年余り漢方治療を取り入れている。2010年に宇部内科小児科医院院長(現職)に就任。2015年に総合内科専門医を取得。

    内科領域にとどまらず、総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、様々な医療情報を発信。

    特に、内科臨床の見地に立ち、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

    著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

    【⇒宇部内科小児科医院HP(https://www.ube-clinic.jp/)】

    著者紹介

    連載糖尿病、高血圧、健康寿命…総合内科専門医が教える「秘訣」

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