リボ払いで返済が終わらない人が続出するのはなぜ?
先生「今回はリボ払いの話をしようか。クレジットカードで分割支払いしている人は多いね。もちろん、先付けでの支払いなので利息が付く。ここでとんでもない利息を払い続けた挙句返せなくなるケースが多発しているんだ」
生徒「そういえばリボ払いには注意、って聞くことがあるわね」
先生「うん。新しく買い物をして借入額が増えても毎月の返済が一定なので、安心してしまうんだね」
ポイントは「元本返済と利息返済の割合」を知ること
しばらく前から流行っている金銭教育だけど、とくに強調されるのが、リボ払いにご用心、っていうテーマだ。リボ払いがなぜ怖いかって、これ実はとても簡単な理屈だ。
そもそもリボ払いって何かってことだけど、金融機関やクレジット会社が顧客ごとに一定のクレジットライン(信用供与枠)を設定し、顧客は毎月一定以上の金額を返済してれば、この金額の枠内いっぱいまで利用できるという方式だ。
返済方法にはいくつか種類かあるけど、毎月返済額を一定にするものが多い。たとえば10万円のクーラーをクレジットカードで買って毎月の返済額を1万円に設定するとしよう。6ヵ月後に7万円の冷蔵庫を買った。それでも毎月の返済額は1万円。さらに1年後には12万円のパソコンを買ってこれもリボ払い。
あらかじめ決められた限度額内だと、どれだけ残高が増えても1ヵ月ごとの金利負担分(=支払利息)が1万円を超えない限り、毎月の返済額は1万円でOKなんだ。だから「クレカでの借入れが増えているけど、毎月の負担は1万円ポッキリだもんね。らくちん!」と思ってしまうんだね。気持ちはわかる。
でも、借り入れが増えたので毎月1万円の返済額のうち利息返済が9,000円で、元本返済が1,000円になっていたらどうなると思う? いつまでたっても、元本はほとんど減らない。こうして、3年、5年、いやひどいときには7年、8年たっても完済できないってことになる。
つまり、毎月の定額返済額に占める元本の割合が低ければ、いつまでも利息は払い続けなければならないんだ(図表1)。
カードローンの「定額返済」も同じ仕組み
これカードローンの分割返済も同じだ。たとえば50万円借り、当初は毎月1万円ずつ返済していたとしよう。すると、あるとき、ATMから打ち出されてくる伝票の次回支払金額が「8,000円」に、さらに数ヵ月したら「6,000円」というように下がるのが普通だ。「もう大分返したので、毎月の定額返済は少なくてもいいんだ」って思うよね。でもこのメッセージには、カード会社の思惑が隠されているんだ。
カード会社は「毎月の元本返済を少なくして、その分、いつまでも利息を取ってやろう」って考えているんだ。カード会社にとってみれば、コンスタントに返済してくれる優良顧客だったら、早く完済されると困る。早く返済されるとあんまり利息が取れないから。長期間、お客としてつなぎとめておけば、利息がどんどん増えていく。
ここで得られる教訓はなんだろう。「毎月の返済額に占める利息と元本の割合はきっちり把握しておくこと」。これに尽きるんだ。これは支払伝票に必ず記されているからね。
元本がほとんど減らないような定額返済だと、いつまでたっても完済できず、延々と利息を支払い続けなくちゃならないんだ。つまり借金漬けってわけだ。
参考:利息先払いってどういうこと?
お金を借りるとき利息が天引きされることがある。いわゆる街金(マチキン)など認可を受けていないもぐりの貸金業者なんかでは堂々と行われている。
たとえば年利20%で100万円を1年間借りるとする。このとき、貸金業者が「1年先にもらう利息を先に払ってもらうよ」といって、実際には80万円しか融通してくれないことがある。これが利息先払いだ。もちろんこのとき、1年後に返済すべき金額は100万円だ。すでに20万円の利息分は先払いしているんだからね。
さて、こんなとき、借入利率は本当に20%と考えていいのだろうか?
直感的には「違うな?」って思うよね。だって「今払う20万円と1年先に払う20万円とでは価値が違う」んだから。「今の20万円の方が価値が高い」からね。そう、実はその直感は正しいんだ。じゃあ、この利息先取りはどう理解したらいいか?
借りる側に立って考えれば簡単だ。つまり80万円を融資してもらって、1年先に100万円にして返すためには、年利何%で運用しなければならないか、って考えるといい(図表2)。それが実質的な借り入れコストなんだから。
つまり実質的には、借入コストは25%なんだ。ここで気づいた人もいると思うけど、実はこれは割引率と利回りの関係にほかならないんだ。上の例で貸金業者が「利率は20%」って言ったのは、実は「割引率」のことだったんだね。
角川 総一
株式会社 金融データシステム 代表取締役
金融教育・金融評論家
昭和24年、大阪生まれ。証券関係専門誌を経て、昭和60年、株式会社金融データシステムを設立し代表取締役就任。わが国初の投信データベースを開発・運営。マクロ経済から個別金融商品までにわたる幅広い分野をカバーするスペシャリストとして、各種研修、講演、テレビ解説の他、FP等通信教育講座の講師としても活躍。
主要著書に『為替が動くとどうなるか』(明日香出版社)、『金融データに強くなる投資スキルアップ講座』(日本経済新聞社)、『日本経済新聞の歩き方』(ビジネス教育出版社)、『ニュースに出る経済数字の本当の読み方』(WAVE出版)等がある。